『ガリーボーイ』ラップ翻訳"Asli Hip Hop"(リアルなヒップホップ)by麻田豊、餡子、Natsume『ガリーボーイ』リリック翻訳プロジェクト(by麻田豊、餡子、Natsume)全紹介!

2019年10月26日

『ガリーボーイ』ラップ翻訳"Apna Time Aayega"(俺の時代がやって来る)by麻田豊、餡子、Natsume


麻田豊、餡子、Natsumeの3名によるインド初のヒップホップ映画『ガリーボーイ』のリリック翻訳シリーズ、いよいよ最終回となる今回は、もちろんこの曲、"Apna Time Aayega"(俺の時代がやって来る)を紹介!

リリックを書いたのはMCシェールのモデルとなったDivineと、この映画のミュージック・スーパーバイザーを務めたAnkur Tewari.
トラックは"Azadi"と同じDub Sharmaが手がけている。
ラップはもちろん主演のランヴィール・シン。
映画のクライマックスで披露される、この映画を象徴する楽曲"Apna Time Aayega"(そこに至るまでの伏線がまたいい!)、それではさっそく聴いてみてください。
(ミュージックビデオはクライマックスシーンそのままではなく、映画のいろんなシーンの寄せ集めなので、未見の方も安心してどうぞ)


ApnaTimeAayega1

ApnaTimeAayega2

ApnaTimeAayega3

餡子さんコメント:
リリックにムラドの想いが込められています。翻訳中かっこよすぎて泣けました。ぜひオーディオと合わせて読んでみてください!
Apna Time Aayegaのタイトルは、ガリーボーイメイキング動画ではApna Time Aagaya(俺の時代がやって来た)に文字られ、ガリーボーイ以降ローカルヒップホップに脚光が浴びたことを示しています。

Apna Time Aayega歌詞解説
・「己の灰の中から生まれ変われ」
確か自主上映会の時の英語字幕はここにPhoenixと書かれていました。不死鳥が一度燃え尽きて灰になって死んだあと、再び灰の中から蘇ることを示唆していると思われます。
・「俺のような才覚が回るヤツには出会えない」
ここで使われるShaana शाणाはムンバイスラングでSmartという意味。
・「おまえは裸で生まれてきた いったい何を持って逝くんだ?」
の部分は、直訳すると「お前は裸でやって来て、何も持たずに去っていく」なのですが、これは中国語のことわざでも同じ意味の「生不帶來死不帶去」という言葉があり、定型句のようです。
・「何も持たずに」
ここのGhanta घंटाはもともと時間という意味ですが、これもスラングでゼロ=無を表すそうです。

読んでもらえば分かる通り、ここにはもうスラムの暮らしも心の痛みも出てこない。
ラッパーになることによって、誇りと自信を手にしたムラードの力強い宣言だ。
2月の自主上映で初めて『ガリーボーイ』を見た時、この曲のシーンでは目の奥から熱いものがこみ上げてくるのを抑えることができなかった。
その後何度この映画を見ても、冷静に分析的に見てみようと思っても、やっぱりこの曲のシーンでは胸が熱くなる。

内気で自信を持てなかったムラードが、ラップに出会ったことで成長し、堂々たるパフォーマンスを見せる。
この曲に関しては、リリックを読んだりミュージックビデオを見るだけではなく、映画のストーリーと合わせて読んで聴くことで、初めて完成する楽曲と言えるだろう。
ヒップホップでは、楽曲単体としてのクオリティーだけでなく、「誰が語るか」も重要な要素である(オジロサウルスのMACCHOの言葉を借りるなら「どの口が何言うかが肝心」)。
この曲はムラードの生き様と重ね合わせて聴くべきなのだ。

ちなみに、以前"Mere Gully Mein"(俺の路地では)のリリック翻訳紹介のときに書いたDivineがカメオ出演する場面が、この曲のライブシーンの直前にある。
ムラードからステージのMCへの台詞という形を借りた、監督や主演のランヴィールから、ガリーラップのシーンを切り開いてきた実在のラッパーたちへのメッセージを、ぜひ見逃さないようにしてほしい。

この曲のタイトル"Apna Time Aayega"(俺の時代が来ている)というフレーズは『ガリーボーイ』公開後一躍脚光を浴び、Tシャツのデザインなどにもたくさん使われている。
(画像はAmazon Indiaで'Apna Time Aayega T-shirt'で検索してみた結果)
スクリーンショット 2019-10-26 23.31.23
これも何度も書いてきたことだが、この映画によってインドのアンダーグラウンドなヒップホップシーンは一躍注目を浴び、この"Apna Time Aayega"は、ムラードだけでなく、実際のガリーのラッパーたちにとっても象徴的な言葉となった。
映画の冒頭で'Original Gully Boys'として紹介されるNaezyとDivineをはじめとする彼らが、今後どんな活躍を見せてくれるのか。
彼らのこれらからの活動こそが、映画『ガリーボーイ』の続編だと言えるのかもしれない。
(本物の映画の続編が計画されているという報道もあったので、もちろんそっちにも期待している)


というわけで、『ガリーボーイ』の主要な楽曲8曲を、麻田豊と餡子の翻訳、Natsumeの協力でお届けしました。
年のことを書くと怒られそうだが、麻田先生は今年で71歳と聞いている。
研究者として数多くのウルドゥー文学に触れてきたであろう麻田先生も、このヒップホップという「詩とリズム」の新しいカルチャーに大いに惹きつけられており、最近は日本やアメリカのヒップホップに関する書籍を何冊も読んでいるとのこと。
インド映画のコアなファンで、これまでに数百本は見てきているという餡子さんも、やはりこの『ガリーボーイ』に特別なものを感じて、リリックの翻訳まで始めてしまった。
我々の仲間の一人で、海外の南アジア社会の音楽を研究してきた社会学者の栗田知宏さん(『ガリーボーイ』のパンフレットで解説を執筆)は、インドでの劇場公開初日に見るために、DivineのホームタウンであるJBナガルの映画館にまで足を伸ばしている(しかも初回の上映!)。

これだけ人を動かす『ガリーボーイ』という映画、そしてこの時代のインドのヒップホップシーンの熱さが、後の時代にどのような評価を残すのか、今から楽しみだ。

次回からは平常運転に戻りますが(でもまた『ガリーボーイ』のことも書くかもしれない)、これからももちろんインドのヒップホップシーンの話題もお届けしてゆきます!
それでは!


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