インド北東部にボブ・ディランがいた(その1)!マニプル州のImphal Talkies!Gully Boy -Indian HipHop Night- でこんな話をしてきました!

2019年10月12日

インド北東部のRage Against The Machine! アッサム州のラップメタルバンド、Ambushによる闘争の音楽



「J-Popバンド」「ボブ・ディラン」と続いた「インド北東部に○○がいた」シリーズ。
今回の第3弾は、前回のボブ・ディランとはうってかわって、90年代から活躍するアメリカのヘヴィロック/ラップメタルバンド Rage Against The Machine(以下RATM)だ。

RATMをご存じない方のために簡単に説明しておく。
1991年にロサンゼルスで結成されたRATMは、レッド・ツェッペリンを想起させるリフとヘヴィなグルーヴに歯切れの良いラップを融合した斬新な音楽性で、90年代に高い人気を集めたヘヴィロックバンドだ。
彼らの代表曲、"Killing In The Name"はこんな感じ。


RATMが特徴的なのは、そのサウンドだけではなかった。
彼らはとことん政治的・社会的なテーマを追求したバンドで、1992年にリリースされたファーストアルバムのジャケットには、アメリカ政府の傀儡政権であった南ベトナム政権下で1964年に抗議の焼身自殺を行った仏教僧の写真を採用した。
マルコムXやチェ・ゲバラらに影響を受けた彼らは、アメリカの覇権主義や資本主義の暴走、そして体制によるあらゆる人権侵害への抗議を表明し、その政治的な思想を鮮明にした活動でも注目を浴びた。
この"Sleep Now In The Fire"のミュージックビデオは、なんとニューヨーク証券取引所前でのゲリラ撮影という攻めっぷりだ。
 
監督は『ボウリング・フォー・コロンバイン』などで知られるマイケル・ムーア。
この頃(99年)彼らはすでに世界中のフェスでトリを務めるような大人気バンドだったが、そのラディカルな姿勢は一向に衰えなかった。

日本で最も知られている曲は、この"Guerrilla Radio"だろう。

総合格闘技"PRIDE"のテーマ曲として有名なこの曲は、当時のブッシュとゴアによる選挙戦を皮肉り、権力者による大衆の支配を糾弾した内容だ。
RATMの政治的・社会的なメッセージは、SlipknotやKORNといった同世代のヘヴィロックバンドがより内面的・個人的なテーマを扱ったのとは対照的で、サウンドだけでなく思想的な面でも、多くのアーティストに影響を与えた。

ついついRATMについての説明が長くなったが、これでもう前回の記事をお読みになった方にはお分りいただけただろう。
独立運動を封じ込めるという名目で、AFSPA(軍事特別法)のもとで令状なしでの拘束や暴力にさらされてきたインド北東部の人々が、RATMの怒りを込めたアジテーションに惹かれるのは、当然というよりも、もはや必然なのだ。
 
ロサンゼルスから遠く離れたインド北東部で、サウンドとアティテュードの両面でRATMの強い影響を受けたバンドが2015年に産声を上げた。
アッサム州Karbi Anglong地区の都市、Diphuの若者たちによって結成されたバンド、Ambushである。
彼らが地元Anglong地区の状況をテーマにした"Bleeding Anglong"をさっそく聴いてみよう。

ご覧の通り、サウンドも、闘争の様子を撮影したミュージックビデオも、驚くほどRATMにそっくりだ。

彼らのFacebookページによると、Anglong地区は「持つもの」と「持たざるもの」に分断されており、「持たざるもの」出身である彼らは、音源発表後も自分たちの楽器を持っておらず、 借りものの楽器で演奏していたという。
この曲のテーマは、かつては平和で美しかった故郷が、AFSPAのもと暴力が横行する地になってしまったことにたいする強烈なプロテストである。

この"9mm"は、彼らの地元でささいな理由で繰り返されるストライキや、暴力の犠牲となった無実の人々について歌ったもの。



Ambushは、自分たちを「声なき者たちの声を表現するために結成された」「彼らの社会や地域で起こっているあらゆる悪に対する革命」であると定義しており、「'Fake encounter'(テロの被疑者に対する治安維持勢力による証拠なき殺人)や政府の腐敗に対する反対」を表明している。
彼らの声明は力強い。
「みんなに言いたいのは、奴らが俺たちを銃弾で黙らせることはできないということだ。俺たちは勇敢で、死ぬことも恐れてはいない。全ての仲間たちよ、立ち上がり、団結する時だ。拳を上げろ!」
(いずれも、Facebookのページより)

彼らは、サウンドだけでなく、反権力、平和、反戦を強く訴えるというアティテュードまでRATMに瓜二つだが、彼らが表現している内容は、コピーやフェイクではなく、これ以上ないほどにリアルなものなのだ。
 
アコースティックギターに乗せて語りかけるように歌うボブ・ディランから、強烈なグルーヴとリフに乗せて不正義を糾弾するRATMまで、あらゆるスタイルの「カウンターカルチャーとしてのロック」が、インド北東部には根づいている。
これは、ムンバイのスラムのラッパーたちが、アメリカの抑圧された黒人たちに共感してヒップホップを始めたのと同様に、北東部のロックミュージシャンたちが、ディランやRATMが訴えた社会的・政治的メッセージに自分たちの環境を重ね合わせ、心を動かされたからに違いない。
こうした現象は、音楽的には面白いが、まずは暴力や不正義がはびこる北東部の状況が一刻も早く改善されることを願うばかりである。

以前、こうした北東部の状況について、現地在住の音楽ジャーナリストから話を聞いてブログに書こうとしたときに、彼から「北東部の状況は本当にデリケートなんだ。よく調べて、気をつけて書いてくれ。俺が話したということで、逮捕されることだってありうる」と言われたことがある。
日本人が日本語でブログに書いたことがきっかけで、インドのジャーナリストが逮捕されるようなことが本当にあるのかどうかは分からないが、少なくともそれくらい気をつける必要がある状況ということなのだろう。

日本ではほとんど情報が入ってこないインド北東部だが、北東部の人々が演奏する音楽を通して、楽しい気持ちにも、厳しい状況にも、少しでも心を寄せることができたらと思う。
これからも、このブログではインド北東部の音楽を硬軟あわせていろいろと紹介してゆきます。


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