プネーのドリームポップバンド Easy Wanderlingsの素晴らしい新曲とミュージックビデオゴアに帰って来たSunburn Festivalと「悪魔の音楽」批判

2019年12月13日

またインドのアーティストが知らないうちに来日していた!女性ドリーミー・ポップデュオ Gouri and Aksha


またしても知らないうちにインドのアーティストが来日公演を行っていたことが判明!
これまた少し前の話になるが、Rolling Stone Indiaの記事によると、ムンバイのソウル/ポップデュオのGouri and Akshaが今年5月に大阪のいくつかの会場でライブを行なったとのこと。

彼女たちは、その後9月にデビューシングル"Look Inside"をリリースしたばかりの新人アーティスト。
前回紹介したEasy Wanderlingsの"My Place To You"を思い起こさせるような、美しいアニメのビデオが印象的なこの曲は、フォークを基調にしながらも、生演奏とエレクトロニックサウンドが融合した叙情的な一曲。



最小限の画面の変化ながら、浮遊感あふれるサウンドとあいまって、幻想的な視覚効果が強く印象に残る映像だ。

Rolling Stone Indiaの記事によると、Gouri and Aksha ーすなわちGouri RanjitとAksha Kiniー はミュージカル『アラジン』のムンバイ公演のリハーサルで出会い、二人で好きな曲を歌ったりハモったりするようになったという。
やがて、デリーでの1ヶ月の公演の間に、ホテルの部屋をシェアして、一緒に曲を書くようになったそうだ。
印象的なアニメーションビデオは、プネーの若手女性アニメ作家Anusha Menonによるもの。
湖畔に座る少女は、彼女たちのうちの一人をモデルにしたものだと思うが、私はそこに、彼女の衣装のせいだけでなく、極めてインドらしからぬものを感じた。

そのことを説明する前に、彼女たちがYouTubeにアップしている他の曲も聴いてみよう。
ピアノとヴォーカルのデュオスタイルで披露される楽曲たちは、ちょっとキャロル・キングを思わせるような情感がある。


ここで、ピアノを弾きながら歌っている方(GouriとAkshaのどっちだろう?)の髪型に注目してほしい。
お分かりだろうか。
彼女にはなんと、前髪がある!
90年代以降、インドの社会は急激に変化しつづけているが、今でもインドの女性の髪型はほとんどがロングのワンレングスだ。
それがもっともインド女性に似合う髪型だからということもあるのだろうが、ロックやヒップホップなどのジャンルで活躍する女性アーティストたちも変わらない。
(おそらくだが、インドの成人女性に前髪のある髪型が好まれないのは、「子どもっぽく見える」という理由からなのではないかと思う)
髪型一つからも、彼女たちが新しい感性を持った世代のアーティストだということが伝わってくるというものだ。

そんな彼女たちに、さっそくメールでインタビューを申し込んでみた。


凡平「とても独創的な音楽を演奏していますが、どんな音楽的な影響を受けているか教えてください」

G&A「たくさんの影響を受けているわ。例を挙げるとしたら、Fiona Apple, Sara Bareilles, Hiatus Kayoteとか。Moses SomneyとかMaroなんかの新しくて素晴らしい音楽からも学んでいるの。これまでにいろんな音楽から学んできたことが、無意識のうちに私たちのソングライティングに現れていると思うわ」


凡平「"Look Inside"はエレクトロニックな音と生演奏が融合したサウンドですが、YouTubeにアップされている他の曲はアコースティックですね。今後はどんなタイプの曲を作っていくつもりですか?」

G&A「曲を作っている時には、ジャンルのことはあんまり考えてないの。どんなものからもインスピレーションを得られるわ。ちょっとした出来事とか、新しく見つけたAbeltonのプラグインとか、私たちの好きなコードの響きとか。そうしたら、アイデアや気持ちを制限したり決めつけたりしないで、自由に羽ばたかせて曲を作るの。
そうは言っても、"Look Inside"は、今のところ私たちがプロデュースした唯一の曲よ。私たちは他の曲をプロデュースしているところなの。YouTubeやSoundcloudにアップしてあるアコースティックバージョンの曲をね」


凡平「Anusha Menonによる"Look Inside"のミュージックビデオが本当に素晴らしいですね。どうやって彼女とコラボレーションすることになったのでしょうか?」

G&A「彼女にコンタクトする前から、私たちは彼女をインスタグラムでフォローしてたの。正直に言うと、私たちはちょっとだけアニメの要素が入ったシングルフレームの絵が欲しかっただけだったの。でもAnushaが曲を聴いたらインスパイアされて、1曲分のきちんとした映像を作ってくれたの。
この曲はもともと内省的なものだったから、ダークで夜の要素が欲しかった。私たちはとくにAnushaの作品の『ワビ・サビ』スタイルな部分が好きだったから、そういうものをお願いしたわ。あとは全部Anushaがやってくれたのよ。私たちが飼っている2匹の猫、ObitoとPakaluを登場させるっていうアイデアもAnushaのものよ。2匹とも、私たちの内面的なパートナーでもあるから(ハートマーク)」


凡平「日本ツアーをすることになったきっかけは?」

Aksha「実は私は今、短期契約で日本で働いているのよ。
こっちに来たとき、いくつかのライブ会場にコンタクトして、私たちの音源をシェアしてみたの。そうしたら、驚くことにたくさんの場所からライブをやってほしいっていう連絡が来たわ。
だからGouriに日本に飛んで来てもらって、彼女が日本にいるうちに、できるだけ多くのギグをしたの」


凡平「ライブはどんなところで行いましたか?大阪だけ?」

G&A「ええ、Akshaの仕事があったから、遠くでライブをするってわけにはいかなかったの。だから、大阪の、全然違う雰囲気の素敵な3つの会場でライブをしたのよ。
1つめは、Art and Nepalっていうアートギャラリー兼カフェ。
2つめは、Soundgarden Bar and Cafe. ここは心斎橋のど真ん中にあって、ツインピークスみたいな不思議な魅力がある場所。
3カ所目は、El Nagueっていう白い素敵なアップライトピアノがあるイタリアンレストランよ。」


なんと、来日公演の理由が日本で働いていたからだということに驚いた。
彼女たちもまた、昨今のインドのインディー音楽シーンで目立つ多くの国際派アーティストと同様に、インドという枠組みの中だけで捉えるのではなく、グローバルなインディーミュージックシーンのなかに位置づけられるべきアーティストなのだろう。
欧米の音楽に影響を受け、当たり前のようにデビュー前に海外でライブを行う、新しいインドのアーティストたち。
彼女の前髪は、そうした新しい世代の姿勢を表す象徴でもあるのだ。(もちろん本人はそんなことは意識していないだろうが)

アコースティックなサウンドを基底に持ちつつ、現代的なアプローチも積極的に取り入れるGouri and Akshaの活動に、これからも注目していきたい。



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