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2019年09月18日

バンガロールのエコ・フレンドリーなフェス Echoes of Earth

インドでは、経済成長と音楽の趣味の多様化にともない、ここ10年ほどで急速に音楽フェス文化が発展している。
ゴアで始まったSunburnのようにとにかく大規模で派手なもの、ラージャスターンのMagnetic Fieldsのように異国情緒を全面に押し出したセレブ路線のもの(この2つはEDM/エレクトロニック系のフェスティバル)から、ムンバイのControl ALT DeleteやアルナーチャルのZiro Festival(この2つはどちらかというとロック中心)のようにインディーであることにこだわったマニアックなものまで、インドでは様々なタイプの音楽フェスが楽しめる。

今回紹介するのは、バンガロール郊外で12月に行われる'Echoes of Earth'.
音楽だけでなく、環境問題にも焦点を当てた、非常にユニークなフェスティバルだ。

Echoes of EarthのFacebookページによると、このフェスは「音楽と大地の祭典」であり、「持続的な生活が必要であるということへの気づきを促すためのフェスティバル」で、「インドで最も環境に優しいフェスであり続けている」という。
国内外40以上のアーティストが出演するこのフェスでは、運営側はリユース、リデュース、リサイクルを心がけ、痕跡を残さないことをポリシーにしているそうだ。
このフェスティバルは、Swordfish Events & Entertainmentという地元のプロモーターと、Watson'sというパブが共同で運営しており、2016年以降、毎年11月または12月の2日間にわたって開催されている。 


ご覧いただいて分かるとおり、アメリカの「バーニング・マン」のような、ヒッピームーブメントの流れをくむアート系のフェスティバルの雰囲気を持っている。
ステージや会場じゅうの巨大なモニュメントがとても印象的だが、これらのうち80%がリサイクル品や不要品によって作られているという。
また、会場全体でプラスチックの使用を禁止しており、ステージの電力もソーラーでまかなっているというから本格的だ。

出演アーティストはロック、ジャズ、エレクトロニック、ポップ、フュージョン、テクノ、伝統音楽と幅広く、音楽だけではなく、アートやローカル文化のショーケースや様々なワークショップなどが行われる、複合的なフェスのようだ。

2018年はフランスのマルチ・インストゥルメンタリストFKJを筆頭に、カナダのTennyson、イギリスのIglooghost、 LAのDJのAwesome Tapes of Africaといった海外勢に加えて、When Chai Met Toast、Ape Echoes、Aditi Ramesh、Duelist Inquiry、Malfnktionらの上質で先鋭的な国内アーティストも出演しており、毎年非常にセンスが良いラインナップを揃えている。
EchoOfEarth2018

2000年頃の、会場が苗場に移ったころのフジロック(もしくは朝霧JAM)のような、自然の中でピースフルな雰囲気が楽しめるフェスのようで、その点は以前紹介した北東部アルナーチャル・プラデーシュ州のZiro Festivalにも似ているかもしれない。

2018年のEcho of Earthから、インドのエレクトロニック・バンド、Duelist Inquiryのライブの様子。


2018年のアフタームービー。


どう見たって、これ、最高じゃないか。 
  
インドのフェス文化は、中産階級が趣味にお金を使えるようになったことで発展した典型的な消費文化という側面が強いが、それだけではなく、こうした社会への問題意識やメッセージ性を持ったイベントもあるというのは素晴らしい。

インドの場合、社会意識の高いインディーアーティストも多く、60年代の欧米のように、音楽がカウンターカルチャーとしての使命感をいまだに持っているようだ(世界中の他の地域と同様に、商業主義の音楽は思いっきり商業主義だが)。


また、これまでにも紹介してきたように、例えば、ヒップホップヘヴィメタルのように、ひとつのジャンルのもとに、さまざまな宗教やコミュニティの人々が、垣根を超えてシーンを形作っているというのもインドのシーンの美しいところだ。
資本主義の歯止めが効かなくなり、分断が進む今日のインド(というか、世界)の中で、音楽を通してひとつの理想的なコミュニティーが形成されていると言ったら、ロマンチストすぎるだろうか。
いずれにしても、フェスは、そうした新しい価値観を持つ人々の祝祭の場でもあるのだろう。

またひとつ、行きたいインドのフェスが増えた。
1年くらい休みを取って、インドじゅうのフェスを回ったりできたら最高なんだけどなあ。


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