インドのアカペラ・グループVoctronicaが来日!Aditi Rameshもメンバーの一人です世界に進出するインドのメタルバンド!

2019年07月30日

インドのメタルバンドが知らないうちに来日して帰国していた件。そして一方インドでは…

まったく気がつかなかったのだが、2月にインド南部ケーララ州出身のスラッシュメタルバンドが来日公演を行っていた。
来日したのは、2018年にデビューしたAmorphiaという3ピースバンドで、大阪で開催された'True Thrash Festival'への出演を含む5公演を行ったらしい。
(と、'Rolling Stone India'の記事にあったが、調べた限りでは2/9の江坂Museでの'True Thrash Festival', 2/16高円寺DeLive, 2/17両国Sunrizeの3公演の情報しか見つけることができなかった。まあとにかく、大阪と東京でライブを行ったことは間違いない)

新鋭バンドにもかかわらず、彼らは'Old School Thrash Metal'を自称しており、1980年代〜90年ごろを彷彿とさせるサウンドを信条としているようだ。
インドのメタルバンドはそれなりにチェックしていたつもりだったのだが、正直に言うと彼らのことは全く知らなかった。

 

大阪で行われたスラッシュメタルのイベントTrue Thrash Festivalでは、オーストラリアのHidden Intent, 中国のAncestor, フィンランドのBonehunter, そして主催者でもある日本のRivergeらと共演。
しれっと書いたが、またしても正直に言うと、ここにも知っているバンドはひとつもない。
これまでも何度か書いてきたように、コアな音楽であればあるほど、国籍や国境は意味をなさなくなる。
スラッシュ/デスメタルやハードコアパンクは、どこの国でも決してメインストリームではないが、根強いファンが必ず一定数はいるジャンルだ。
ロック以外では、レゲエやサイケデリックトランスなどにも同様の傾向があるように思う。
記号的とも言えるほどに特徴的なスタイルやリズムを持つ音楽ジャンルは、歌詞ではなくサウンドを重視するファンが多いため、国境や言語を超えた受容がされやすい。
また、1カ国あたりのマーケットも小さいために、アーティストやリスナーが国境を越えたファンベースを形成する傾向もあるのだろう。
(逆に、国境を超えたヒットが最も難しいジャンルが、国内に十分な大きさのマーケットがあり、歌詞の内容が大きな意味を持つ非英語圏のポップスやヒップホップではないだろうか)

Amorphiaの日本ツアーの様子を記録したこの映像を見ると、ステージダイブが続出する熱いライブを繰り広げながらも、オフにはたこ焼きを食べたり、奈良を観光したり、アイドルのフリーライブを楽しんだりと日本滞在を満喫したようだ。

ホテルの浴衣を着てふざけている姿が微笑ましい。

日本ツアーのライブの中から、スラッシュ・メタル界を代表するバンドで、つい先ごろ引退を表明したSlayerのカバー曲"Black Magic".

ところで、ベーシストが見当たらないけど、どこにいるのだろうか。

知られざるメタル大国、インドにはスラッシュメタルバンドも大勢おり、有名どころでは同郷ケーララのChaosや、ベテランのBrahma(現在の活動状況は不明)らがいるが、今回のAmorphiaの来日公演はこうした先輩バンドに先がけてのものとなった。
(インドのスラッシュメタルバンドについては、YouTubeのこちらの動画でたっぷり紹介されているので興味のある方はご覧ください)

改めて感じたのは、このインターネットで世界中が繋がった時代にマニアックな音楽を演奏するミュージシャンついて語る場合、もはや「インドのバンド」とか「どこの国のバンド」という出身地に関する情報は、ほとんど無意味なのではないだろうかということだ。
実際、ツアー中の彼らの様子を見ると、じつに正しくアンダーグラウンドロッカー然としていて、見てくれ以外に彼らがインド人だと感じさせられる場面は全くない。
(唯一、11:40あたりから、ペットボトルに口をつけずに飲むインド人独特の飲み方をしているところ以外は!)

そういえば、こういうブログを始める前は、私もメタルやエレクトロニック系の音楽を聴くときにはアーティストの国籍はあんまり気にしていなかった。
それなのに、インドの音楽シーンにばかり注目しているうちに、無意識のうちに「国籍フィルター」をかけて見るようになっていたらしい。
どういうことかと言うと、「インドのメタルバンドはレベルは高いけど、日本での知名度は低いし、来日はまずないだろう。もし来日するなら必ず自分のアンテナに引っかかるはず」という妙な思い込みがあったのだ。
ところが、一般的な知名度なんか関係なく、Amorphiaの音楽を評価して招聘した人がいて、きちんとライブも盛り上がっていたのだから、スラッシュメタルファンの情報網と慧眼には恐れ入った。
彼らのライブを見れば分かる通り「分かるやつだけ分かればいいが、分かるやつには必ず分かる」クオリティーが彼らにはあり、ファンもそれを熱狂的に受け入れていた。
これで昨年のデスメタルバンドGutslitに続いて、2年連続でインドのエクストリーム・メタル勢が来日したことになる。
いずれにしても、インドもまた、ヨーロッパや南北アメリカ、オセアニアや東アジアのように、いつハードコアなジャンルの優れたアーティストが出てきても不思議ではない時代に入ったということなのだろう。

一方で、インドでは7月25〜28日にかけて、日本人音響アーティストのYosi Horikawaがデリー、ハイデラバード、バンガロール、ムンバイの4都市を巡るツアーを行ったばかり。
彼は、自然や日常のサウンドを再構築して音楽を組み立てているアーティストで、やはりメインストリームの音楽からは大きく離れた活動をしている。
(音楽的にほぼ様式化されているスラッシュメタルとは、全く異なるジャンルだが)



これまでも、MonoDaisuke Tababe, DJ Nobu, Wata Igarashiなど、一般的な知名度ではなく、それぞれのジャンルで国際的な評価の高い日本人アーティストの招聘を行ってきたインドの音楽業界だが、今回もそのセンスの良さを改めて見せつけられた。
このYosi Horikawaも、「日本の音楽シーンを代表するアーティストとして」というより、「世界的に活躍する先鋭的なアーティストとして」インドでの公演を行ったはずである。
国籍に関係なく、こうした実験的かつ個性的な音楽のリスナーがきちんとインドにいて、招聘するプロモーターがいるということに、インドのシーンの成熟を改めて感じさせられた。
(ちなみにメタルバンドでは、数年前に埼玉のデスメタルバンド兀突骨がインド・ネパールツアーを行ったことが記憶に新しい)

今回紹介したのは、まさに音楽のグローバリゼーションを感じさせられる事例だが、こうした国境や国籍を無意味化するような流れの一方で、インドのローカルなシーンがよりユニークに発展してきているというのは、いつもこのブログで紹介している通り。
インドの音楽シーンは、グローバル化の影響を受けて、ますます面白いことになってきているのだ。
次はインドから誰が来日して、日本から誰がインドツアーを行うのか、非常に楽しみだ。

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