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2019年02月25日

インド北東部アルナーチャル・プラデーシュ州で今起きていること

今回はインド北東部アルナーチャル・プラデーシュ州の州都Itanagarで起きている暴動のニュースをお届けする。

私も正確に状況を追いきれていないのだが、同州の政権を握っているBJP(インド人民党)が、隣接するアッサム州の指定部族(=Scheduled Tribe. インド政府の保護政策の対象となっている部族)に対して、アルナーチャル・プラデーシュへの永住権を許可しようとしたことへの抗議運動が激化し暴徒化した模様。
州政府の大臣の邸宅に火が放たれたり、鎮圧のために警官が発砲し死傷者が出る事態となっている。

そもそもの発端として、インド中央政府が発表したバングラデシュやアフガニスタンからの「ムスリム以外の」少数民族のインド北東部7州への移住を認める法案(いろいろと突っ込みどころがあるが)に対し、ただでさえインドのマジョリティーとは民族も文化も異なり被差別的な立場に置かれている北東部の住民から「そんな勝手なことをされては自分たちの文化が破壊される」と反発が起きていた、という背景がある。

これまでこのブログでも何度も書いていた通り、セブン・シスターズ(7姉妹州)と呼ばれるインド北東部は、州ごとに異なる文化を持ち、一つの州の中にも多様性を持つ複数の民族が暮らしている美しい土地だ。
彼らはアーリア系・ドラヴィダ系の二大民族やヒンドゥー・イスラームの二大宗教に代表される典型的なインド文化とは全く異なるルーツを持ち、マジョリティーである彼らからの差別や抑圧に苦しんできた歴史を持っている。

ヒンドゥー至上主義的な傾向を持つとされるBJP政府が、こうした歴史の上にある住民感情を無視した政策を発表したことに対して、地元の怒りが爆発したというのがこのニュースの背景のようだ。

実際のニュース映像。
ニュース中のPRCというのはPermanent Residenc Certificate(永住許可証)を意味している。


以前ナガランドを舞台にした「あまねき旋律」について書いた記事で紹介したナガのスーパースター、Alobo Nagaもこの混乱に巻き込まれ、Itanagarでの映画祭に出演しようとしていたところ車両を襲われ、25万ルピー相当の楽器や車両を失ったとのこと。
幸いにして彼とバンドメンバーたちに怪我はなかったようだ。


この事件について解説された記事:
https://indianexpress.com/article/explained/arunachal-pradesh-what-is-permanent-resident-certificate-protests-bandh-curfew-5598729/
https://www.indiatoday.in/india/story/arunachal-pradesh-bandh-against-govt-panel-proposals-prc-turns-violent-1462928-2019-02-22

Alobo Nagaが襲撃されたニュースはこちら
http://www.easternmirrornagaland.com/alobo-naga-faces-mob-fury-in-arunachal/


インド好きな人でもインド北東部について詳しい人は少ないだろうし、アルナーチャル・プラデーシュと言われてピンと来る人も少ないと思うが、この暴動が起きているItanagarは、まだこのブログを始めたばかりの頃、いちばん最初にインタビューに答えてくれたメタルバンドSacred SecrecyのTana Doniが暮らす街だ。
正直言って、こう言っては大変失礼だが、私もこういうブログを始めて、インドの音楽を深く掘っていかなければ、意識することのない土地だったかもしれない。

でも、ここに暮らすミュージシャンのことを知ってみれば、Itanagarは私たちと同じように音楽を愛し、演奏し、チャンスの少ない田舎暮らしにうんざりしている、日本人によく似た人たちが暮らす無視することのできない土地だ。

このニュースに関してはどうすれば正解なのか、知識も知恵も足りなさすぎて全くわからないし、正解があるのかどうかも分からない。
それでも、日本では大きく報道されないであろうこのニュースのことを、少しでも読者のみなさんに知って欲しくてこの記事を書いた。
自分の暮らす街で大変なことが起きているのに、そのことを自分と同じように音楽を愛する他の国の人たちが知らない、なんてどうしようもなくさみしいことが少しでも無いように。

世界中では毎日たくさんの悲劇的なことが起こっていて、全てのニュースを追い続けることなんてとても無理だけど、ご縁ができた場所だけでも、せめて気にかけていたい。

Itanagarに早く穏やかな日々が訪れ、俺たちのメタル・ブラザー、Tanaが思う存分"Shitanagar"(この街のことを呪った曲)と叫べますように!
東京から祈りを込めて。



Tana Doniへのインタビュー記事:
この頃は、「なぜインドのなかでも辺境地帯の北東部にたくさんのデスメタル・バンドがいるのか?」という疑問を持っていた時期だった。
「デスメタルバンドから返事が来た!Alien Godsのギタリストが語るインド北東部の音楽シーン」

彼の曲"Shitanagar"はこちらから。
「アルナーチャルのメタル・ブラザー、Tana Doniの新曲!」

アルナーチャル・プラデーシュは自然が豊かな美しい州で、こんなに素晴らしいフェスもある。
今年は日本からポストロックバンドのMONOが出演した。
「日本や海外のアーティストも出演!Ziro Festival!」


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