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2018年08月23日

インドのインディーズシーンの歴史その2 「黄金の声を持つ男」Gary Lawyer

さてさて、先日唐突に始まった、Vh1 Sound Nationが選んだインドのインディーミュージックシーンを形作った曲72選を順にレビューしていくこの企画、今回は第2回めです。
まだリストの先は長いので、飛ばし気味でいきますね。

VH1INDIAによるインドのインディー100曲

第2回めに取り上げるのは、リストの2番手1989年に活動を開始したロックシンガーのGary Lawyer.
「黄金の声を持つ男(The man with golden voice)」とも呼ばれた名シンガーということだそうです。
さっそく聴いてみましょう、"Night on Fire".


画質悪い!
それになんと、前回紹介したRock Machineの"Top of the Rock"はもろVan Halenだったけど、今回は曲の感じもビデオも思いっきりWhite Snakeじゃないか!

ふつう、80年代ロックの文脈でインディーロックとかオルタナティブと言った場合、アメリカならSonic YouthやREM、イギリスだとThe Smithsみたいな、もっとローファイっぽい質感だったり、内省的だったりする音楽を指す。
ところがインドでは、おそらくこの時代にはロックファンの絶対数が少なかったからだと思うが、世界的にはメジャーど真ん中な産業ハードロックがインディーロックの草分けとして扱われているのがなんとも面白い。
「すべての芸術は模倣から始まる」というが、この頃、インドのロックはまだメジャーなロックの模倣の時代だったというわけだ。

Gary Lawyer、英語の名前だが、これが芸名なのか本名なのかは不明。
インドでもクリスチャンであれば西洋風の名前をつけることはよくあるし、「弁護士」という不思議な姓も、昔インドでは職業をそのまま苗字にした人たちがいたらしい(タイプライターという苗字の人がいるという話も聞いたことがある)ので、本名の可能性がある。
いっぽうで、とくに欧米に進出するインド人の場合、現地で発音しにくい名前を避けて、英語風の名前を名乗ることもよくあるので、結局のところよく分からない。

1959年生まれのGaryはどうやらアメリカで育ったらしく、ニューヨークで音楽活動を開始したという。
その後、ボンベイに戻りロック歌手として母国で活躍することになる。
このブログで紹介したアーティストの中でも何組か出てきた、海外で流行の音楽に触れてそれをインドに持ち帰るアーティストのはしりでもあるというわけだ。

いろいろ調べてみたのだけど、彼のバイオグラフィーには、具体的な年号などの情報が極端に欠如していて、いつインドに戻ったのか、いつこの"Nights on Fire"がリリースされたのか、とうとうつかめなかった。
この曲は曲調からしてデビュー早々の80年代末か90年代初頭だと思うのだけど、どうでしょう。
この楽曲ではどうかは不明だが、彼は「MTVで初めて楽曲がプレイされたインド人」としてもインドの音楽史に名を残している。

インドにおけるロックシンガーの草分け的な彼は、ライブではドアーズ、フランク・シナトラ、エルヴィスなどの曲をカバーすることもあり、ボンジョビ、ブライアン・アダムス、デフ・レパードなどのオープニングアクトを務めたこともあるという。
フレディ・マーキュリーのトリビュート・コンサートで、フレディの家族や友人の前でクイーンの曲を歌ったこともあるそうだ。

そういえば、フレディ・マーキュリーのルーツもインド系。
彼は10世紀頃にペルシアからインド北西部グジャラート州に移り住んだパールスィー(もとはペルシア人という意味)と呼ばれるゾロアスター教徒の家庭の出身で、本名はファルーク・バルサラという。
パキスタンのカッワーリー(イスラム神秘主義スーフィズムの宗教歌)を初めて聴いた時、こぶしの効いた声の張り上げ方がちょっとフレディっぽく聞こえて、西アジアから南アジアに暮らす人々の声帯が、フレディのヴォーカルにも活きているんだなあ、と感じたものだった。

話が逸れました。
このGary Lawyerさん、現在ではジャズのスタンダードを歌うアルバムをレコーディング中とのこと。
第2回目、まだまだインドのインディーミュージックは王道ロックです。
ここからインドのインディーズシーンがどう変化してくるのか、楽しみになってきましたね。
え?なってない?
まあそれでも続けます。

それではまた! 

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