2023年09月03日
ドキュメンタリー映画『燃えあがる女性記者たち』について長々と語る
ドキュメンタリー映画『燃えあがる女性記者たち』の試写を見た。
インドの片田舎でダリト(被差別階級)の女性たちが運営する新聞社「カバル・ラハリヤ」(Khabar Lahariya)。
その記者たちが、過酷すぎる社会をジャーナリズムの力で変えてゆく様子を記録したこの映画は、2021年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされ、サンダンス映画祭ワールドシネマ・ドキュメンタリー部門観客賞、山形国際ドキュメンタリー映画祭市民賞など、世界各地で30以上もの映画賞を受賞した。
監督はスシュミト・ゴーシュとリントゥ・トーマスの二人が共同して手がけている。
テーマやタイトルを見て、インドや社会問題に関心がある向けの作品だと思われる方もいるかもしれないが、この映画は、インド的であると同時に、普遍的で深い「問い」を持つ、素晴らしい作品である。
(以下、いつもながらすごく長くなってしまったので、映画鑑賞後に読んだ方がよいかもしれません)
映画の舞台はインド北部のウッタル・プラデーシュ州。
インド最大の人口を誇るこの州には、タージマハルやガンジス川の聖地ヴァーラーナシーなどの著名な観光地があり、日本人旅行者にも馴染み深い場所だ。
しかし同州にはもうひとつの顔がある。
ウッタル・プラデーシュはインド有数の貧困地帯であり、さらに頑迷なヒンドゥー至上主義が強い土地でもあるのだ。
ジャーナリストのほとんどを高位カーストの男性が占めるこの地で、インドで唯一のダリト女性たちによる新聞社「カバル・ラハリヤ」は、2002年に産声を上げた。
ダリトとは、カースト制度の枠外に位置づけられた最下層の被差別民のことである。
記者たちが取材する現実は、ものすごく辛くてやりきれない。
ダリトの女性が男たちに繰り返しレイプされても、警察はまったく捜査に応じてくれない。
閉鎖された炭鉱でマフィアによる違法採掘が行われ、そこで働いていた家族が落盤事故の犠牲になる。
インドの貧困や差別について多少なりとも知っている人にとっては、どこかで聞いたことがあるような話かもしれない。
しかしスクリーンに映される現実は、これまで見聞きした以上に救いがなく感じる。
その理由は、このドキュメンタリーが貧困地域の被差別階級のなかでも、さらに抑圧された立場である女性の目線で描かれているからだろう。
世界最大の民主主義国インドには、2020年代になっても法も正義もない世界があたり前に存在しているのだ。
地方で悲劇が繰り返されても、大都市を拠点とするメディアはいちいち取材に来たりなんかしない。
だから問題は知られることなく放置され、強者と弱者の関係は永遠に変わることがない。
こうした過酷すぎる地方の現実を広く発信するため「カバル・ラハリヤ」の主任記者ミーラは、紙媒体としての新聞発行だけではなく、ウェブでの動画ニュースの配信を決意した。
だが、記者たちの中には、録画や配信に使うスマホに触れるのが初めてだという者も、スマホ操作に必要な英語が不得意な者もいる。
彼女たちは、「英語がわからないから銀行でお金がおろせなかった」とか「最初は村の外に出るのも不安だった」なんて吐露したりもする。
本当に大丈夫なのかと心配になってしまうが、使命感に燃える彼女たちの眼差しは力強い。
ドン・キホーテ的とも言える彼女たちの挑戦は、救いの存在しなかった社会に、ほんの少しずつ、希望と正義をもたらしてゆく。
…というのが、この映画の(ドキュメンタリーではあるけれど)一応のあらすじだ。
彼女たちは決してスーパーヒーローではない。
取材先では唯一の救いとして頼りにされても、家では夫や家族の無理解に苦しんでいる。
権力の闇を報道した報復として、いつか殺されてしまうかもしれないと怯えたりもする。
それでも、彼女たちが志を持って報道を続けているのは、何世代にもわたって続いてきた因習を打ち破る希望をジャーナリズムに見出しているからだろう。
政治家に高級そうなカメラを向ける男性記者たちのなかで、ただ一人スマホを掲げる女性記者の、なんと誇らしげなことか。
日本ではほとんどの人が持つスマホという武器を手に、人生を、社会を変えようと勇敢に行動する彼女たちを通して「じゃあお前はどうするんだ」という問いが私たちに突きつけられる。
私たちはどう生きるか。
彼女たちの前途が必ずしも希望に満ちているわけではない。
本来は苦しむ人々を救うべき政治の世界では、宗教が前景化して、極めて保守的な価値観を肯定するヒンドゥー至上主義が台頭してきている。
映画には、荒唐無稽とも言えるヒンドゥー至上主義者の若者が登場するのだが、記者は、彼をただの愚か者として取り上げたりはしない。
不寛容な彼もまた、貧しさと希望のない社会構造に苦しむ弱者でもあるのだ。
女性たちを抑圧する存在でもあるはずの彼に真摯に取材を重ねてゆくシーンは、この映画のハイライトのひとつだろう。
あんまり褒めすぎるのもなんなので、ネガティブな点も挙げておく。
ドキュメンタリー映画としての「演出」的な部分で、ちょっと不自然なところが散見されるのが、若干気になった。
例えば、記者が被差別カーストの女性に「どうしてこんなに村外れに暮らしているの?」と尋ねて、女性が「私たちは不浄だと考えられているからだ」と答えるシーン。
これは村社会に暮らすインド人だったら、聞くまでもなく分かっているはずのこと。
わざわざ尋ねたりしないだろう。
インドの田舎の保守性を、なじみのない人たちにも分かりやすく伝えるためのシーンなのだろうが、あえて説明的な発言をさせるのではなく、ナレーションや字幕で補うこともできたんじゃないだろうか。
そう感じた分部がいくつかあった。
また、インドでは、この映画の「主人公」である「カバル・ラハリヤ」の女性記者たちが、映画の内容について不満に感じているという、見逃せない報道もあった。
いくつかのウェブサイト(文末参照)によると、その内容は以下のようなものだそうだ。
- 「カバル・ラハリヤ」は政治や社会問題などの深刻なテーマだけでなく、もっと日常的な話題も扱っている。
- 「カバル・ラハリヤ」は、特定の政治的スタンスを取っているわけではない。与党だけではなく、全ての政党に対して厳しく責任を追及している。
- 「カバル・ラハリヤ」は、ダリトの女性のみによって運営されているのではない。構成メンバーには、OBC(Other Backward Classes「その他後進階級」。ダリトのようにカーストの外に位置付けられているわけではないが、支援が必要なため優遇措置の対象となっているコミュニティ)や高位カーストやムスリムの女性たちもいる。
ひとつめの点については、「カバル・ラハリヤ」のYouTubeチャンネルを確認してみたところ、確かに硬派なニュースだけでなく、健康やスマホアプリの使い方など、多様なテーマを扱っているようだ。
記者たちが、自分たちの媒体がある種の「誤解」をされてしまうことを素直に快く思えないという気持ちは分かる。
だが、監督たちの目線で考えれば、限られた時間でテーマを伝えるための編集が必要だということも理解できる。
これは、ノンフィクション映画では避けられないジレンマだろう。
ふたつめの点については、おそらくはリベラルな(というか、反与党よりの)政治姿勢を持つ監督と、特定の主義ではなく「抑圧されるもの」の側に立つというスタンスで活動する記者たちとの考え方の違いによるものだろう。
「カバル・ラハリヤ」にとっては、保守的・ヒンドゥー至上主義的傾向を強める政治状況のなかで、必要以上に悪目立ちしたくないという意図もあるのかもしれない。
みっつめの相違も、分かりやすさを重視する監督たちと、正確さを尊重したい記者たちの立ち位置の違いによるものとみて良いだろう。
映画では「カバル・ラハリヤ」を、「ダリト女性によって運営されている」ではなく「ダリト女性によって立ち上げられた」と紹介しているので、もしかしたら立ち上げ時のメンバーは全てダリト女性で、その後で他のコミュニティの女性たちが加わったということなのかもしれない。
記者たちには、女性であることにはこだわりつつも、地域の問題を「カースト間闘争」という図式でのみ捉えてほしくないという意図があるのだろう。
いずれにしても、映画で紹介されているのは、かなり単純化された構図であり、現実はさらに複雑で、彼女たちは特定の政党やコミュニティに肩入れせずに活動している、ということに留意する必要があるようだ。
(9/5追記:なお、この記事を読んだ映画関係者の方から、上記の見解の相違があってもなお「監督と記者たちの関係は良好」という情報を伺った。草の根に根差した報道に携わる記者たちと、世界に向けて映画という手段で問題を提起する監督との方法論の違いはあっても、本質的に大事にしたいものは共通しているのだろう。それは映画からも大いに伝わってきた)
すでに十分すぎるほど長くなってしまったが、ふだんインドのインディペンデント音楽を扱っているブログとして注目した点をさらに2点ほど。
1点目は、映画のなかで、保守的なヒンドゥーの若者たちが、宗教パレードのシーンで、ヒンドゥーっぽくて、かつハードコアテクノ的なダンスミュージックに合わせて踊り狂っていたこと。
以前から北インドの後進地域に往年のロッテルダムテクノ的な音像の殺伐としたダンスミュージックが存在していることは気になっていた。
最初にこの手の音楽の存在に気がついたのは、2021年のSoi48パーティーにオンライン出演したDJ Tapas MTを聴いた時だった。
彼がプレイするサウンドの歪みまくった暴力的な音像もさることながら、インドからオンラインで参加していたファンたちの傍若無人っぷりがまたすさまじかった。
イベントの進行が1時間くらい押していたのだが、ファンたちは他のDJたちのプレイにはいっさい触れずに「Tapas MTを早く出せ」「このイベントはTapas MTの名前を使って集客している詐欺だ」(日本で知名度ないっつうの)みたいなコメントを書き込みまくっていた。
実害があったわけではないし(その後DJ Tapas MTの強烈なDJセットが披露され、ことなきを得た)、文化の違いとしては面白かったのだが、「遠く離れた異国のイベントで俺たちの地元のDJが出るってよ」みたいな温かさのまったくない、ひたすら殺伐としたファンのノリに衝撃を受けたものだった。
インド的な要素を取り入れたダンスミュージックといえば、かつてのゴアトランスはぐねぐねと曲がったサイケデリックなサウンドを特徴とし、初期においてはヒッピームーブメント発祥のピースフルなノリを持っていた。
だが、この地方のローカルDJが作るひたすら直線的で破壊衝動を鼓舞するようなサウンドは、同じインド的なダンスミュージックとはいえ、かつてのトランスとは真逆の方向性を志向している。
初めてこのサウンドを聴いた時に、これはきっとこの地域のナショナリズム的感情(と、それに基づくムスリム排斥などの暴力的な運動)と何らかの関連があるに違いないと思ったものだが、『燃え上がる女性記者たち』を見て、その予感は確信へと変わった。
ちなみにこの地域に同様のスタイルで活動するDJは他にも数多く存在している。
PAシステムの限界を超えたような歪んだ低音と、ひたすら扇情的かつ攻撃的なビート。
鬱屈した地方在住者の感情を発散させるために自然発生的に生まれたサウンドなのだろうが、音としては非常に面白いだけに、排他的な思想と結びついていることがただただ残念である。
インド音楽ブロガー目線で気になった2点目は、音楽担当としてTajdar Junaidの名前があったこと。
Tajdar Junaidは西ベンガル出身のシンガーソングライターで、2013年にアルバム"What Colour is Your Raindrop"をリリース。
コマ撮りアニメを使用した"Ekta Golpo feat. Satyaki Banerjee, Anusheh Anadil, Diptanshu Roy"のミュージックビデオでは、独特な作風で強い印象を残した。
最近名前を聴かないからどうしているのかと思っていたら、東京外大で2022年12月に上映されたインド北東部からデリーへの移民をテーマにした映画『アクニ デリーの香るアパート』の音楽担当としてその名前を見つけてびっくりしたのだった。
それに続いて、今度はこのドキュメンタリー映画で名前を見かけたのでまた驚いたというわけだ。
完全に映画音楽に移ってしまったのではなく、まだまだインディーミュージシャンとしても活動しているようで、1ヶ月ほど前には、ちょっとジプシーとかミュゼットみたいなスタイルで、同郷の伝説的ロックバンドMohineer GhoraguliのカバーをYouTubeにアップしていた。
西ベンガル出身のミュージシャンは、言語や地域的な問題からか、なかなか全インド的な人気を得ることが難しいようだが、彼は硬派な映画音楽にも活動範囲を広げながらしぶとく活動を続けているようだ。
また映画のエンドロールで彼の名前を見ることがあるかもしれない。
いろいろととりとめなく書いてしまったけど、『燃えあがる女性記者たち』、心のどこかに火がつく素晴らしい映画なので、ぜひたくさんの人に見てもらいたい。
上映は9/16から!
https://www.npr.org/sections/goatsandsoda/2022/03/26/1088862907/writing-with-fire-is-up-for-an-oscar-but-its-subjects-say-theyre-misrepresented
https://scroll.in/reel/1020016/khabar-lahariya-says-oscar-nominated-documentary-misrepresents-its-journalistic-work
https://thewire.in/film/writing-with-fire-savarna-caste-khabar-lahariya
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2023年08月31日
2023年秋 インドのフェス事情!
日本では音楽フェスのシーズンといえば夏だが、インドでは過ごしやすい気候の冬に多くの音楽フェスが開催されている。
インドはいまやアジアを代表するフェス大国で、アメリカ発祥の世界的ロックフェスLollapaloozaがアジアで初めて行われたり、世界で3番目の規模のEDMフェスティバルSunburnが開催されるなど、海外の大物アーティストが参加するものから、国内アーティスト中心のものまで、フェスの数は年々増える一方。
(これまでに紹介したインドの注目フェス情報は最後にまとめてリンクを貼っておきます)
今回は、本格的なシーズン到来を前に、2023年の秋に行われる面白いフェスを2つほど紹介させてもらいます。
まず紹介するのは、ノルウェーのハウス/EDMプロデューサー、Kygo(カイゴ)が主催するPalm Tree Music Festival.
去年Lollapaloozaの会場にもなったムンバイの競馬場Mahalakshmi Race Courseで、11月3日から5日にかけて開催される。
Palm Tree Music Festivalはこれまでヨーロッパやアメリカ、オーストラリアなどで開催されていて、アジアではバリ島で開催されたことがある。
南アジアでの開催は初めてで、ムンバイの1週間前には、エジプトのカイロでの開催も発表されている。
カイロ会場は500名限定の超VIP向けフェスとして開催されるようで、販売されるチケットはもっとも安い入場券でも1,111米ドル。
このチケットには、4つ星ホテルへの1泊と、ピラミッドやスフィンクス散策、ピラミッド周辺でのキャメルライド、ビールとワイン飲み放題などが含まれている。
もっとも高い個人向けチケットは7,777米ドルで、これには5つ星ホテルへの3泊、24時間の執事サービス、シャンパンボトル、出演アーティストとのウェルカムディナー、ピラミッド内の「王の間」ツアー(!)、空港への送迎などが含まれていて、さらに豪華な4名分34,998ドルのチケットもある。
おそらくカイロでのフェスは、このバリ会場のような雰囲気で行われるのだろう。
より大規模な会場で行われるムンバイでのフェスは、おそらくこのニューヨーク郊外のハンプトンズで行われたような形になるものと思われる。
インドでもEDM系のフェスティバルは非常にさかんで、例えばラージャスターン州の宮殿で行われるMagnetic Fields Festivalは、カイロのPalm Tree同様にかなりセレブっぽい路線で行われている。
てっきりムンバイのPalm Treeも同じようなスタイルで行われるものだと思っていたら、チケット代は1,500ルピー(2,660円)からとのことで、結構リーズナブルな価格に抑えられているようだ。
(ただし、2万ルピーの高級チケットもある)
出演者には、KygoのほかKungs(フランス)、Sam Feldt(オランダ)、Kidnap(イギリス)、Edward Maya(ルーマニア)、Forester(アメリカ)らの欧米のEDM系DJのみ。
インドで開催されるのにインド人アーティストが一人もいないのがちょっと感じ悪い気もするが(他の国内のEDM系フェスには、少なからずインド人のDJも出演している)、インドではかつての日本のように、「洋楽のほうが進んでいてカッコイイ」という価値観がまだ根強いので、要はそういうオーディエンスを対象にしたフェスということなのだろう。
(あるいは、オーガナイザーのKygoが、単にインドのDJ/プロデューサーを知らなかったのかもしれない)
Palm Tree Music Festivalとは逆に、インド国内のアーティストに特化したフェスも行われる。
9月2日にムンバイ、9月16日にデリーで開催されるSouth Side Storyは、出演者を南インドのアーティストに限定しているという、非常に面白いイベントだ。
このイベントの特異さを説明するために、一応地図をのっけておきます。
(出典:https://www.mapsofindia.com/my-india/india/the-new-india-28-states-and-9-union-territories-maps-and-facts)
一般的に南インドと言われるのは、タミルナードゥ(タミル語圏)、ケーララ(マラヤーラム語圏)、カルナータカ(カンナダ語圏)、アーンドラ・プラデーシュとテランガーナ(テルグ語圏)の5つの州のこと。
South Side Storyが行われるデリーとムンバイは、同じ国内でも文化や言語体系がまったく異なる北インド文化圏の大都市だ。
いずれもインディーミュージシャンがたくさんいる地域なので、あえて地元アーティストを出さずに、地理的にも文化的にも遠く離れたサウスにこだわった音楽フェスが開催されるというのは非常に珍しい。
古典音楽とかだとあるのかもしれないが、少なくともインディーズ系の音楽では聞いたことがない。
South Side Storyは昨年に続いて2回目の開催だそうで、昨年の様子を見る限り、単なる音楽フェスティバルではなく、伝統芸能や食文化体験(バナナの葉に盛り付ける南インドの定食ミールス)などを含めたイベントらしく、さらに面白そうだ。
デリーやムンバイの人たちにとってはエキゾチックな体験ができて、サウスの出身者にとっては懐かしというところを狙っているのだろう。
参加アーティストもいかにも南インドらしい濃いメンツが揃っているので、何組か動画で紹介したい。
Thaikkudam Bridge "One"
ムンバイでのヘッドライナーは、昨年も出演してアフタームービーにも曲が使われているケーララ州のThaikkudam Bridge.
このケーララ州の観光プロモーションのようなミュージックビデオを見ていただければ分かる通り、彼らは地元の文化を非常に誇りしていて、魚をよく食べる食文化から自分たちの音楽を'fish rock'と称している。
ThirumaLi "Rap Money"
デリーのヘッドライナーは、ケーララのラッパーThirumaLi.
ヒンディー語圏のデリーで、しかもリリックが重要な意味を持つラップで、全く異なる言語系統のマラヤーラム語のラッパーがヘッドライナーを飾ることは、このコンセプトのフェス以外ではまずない。
ほとんどのデリー出身者にとって、マラヤーラム語は理解できないはずで、これはかなり画期的なことだ。
ミュージックビデオを見る限り、ラップのスキルもしっかりしていて、音もかっこいいので、これでパフォーマンスが良ければきっと大いに盛り上がることだろう。
デリー会場は他にもラッパーが多くて、チェンナイ(タミルナードゥ州の州都)のArivuやベンガルールのHanumankindなどが出演する。
Agam "Mist of Capricorn (Manavyalakincharadate) "
ムンバイに出演するベンガルールで2003年に結成されたAgamは、南インドの古典であるカルナーティック音楽を導入したカルナーティック・プログレッシブロックを標榜するバンド。
この曲は18〜19世紀の音楽家でカルナーティックの楽聖の一人とされているティヤーガラージャをもとにしているとのこと。
フジロックで来日したJATAYUでカルナーティック・フュージョンを知った人も多いと思うが、変拍子や複雑なリズムを含んだカルナーティック音楽はプログレッシブ・ロックとの相性も抜群で、その先駆け的な存在であるAgamは、JATAYUのメンバーもインタビューで「カルナーティックとロックの融合に大きな貢献を果たしたバンド」と高く評価している。
AATTAM KALASAMITHI & THEKKINKAADU BAND "Deva Shree Ganesha"
AATAM KALASAMITHI & THEKKINKAADU BANDはケーララの大所帯パーカッション・グループで、同郷ケーララの人力トランスバンド、Shanka Tribeにも似た感じの音像だが、こちらはぐっとインドっぽい要素が強いで、この曲は象頭の神ガネーシャを讃えるタイトルが付けられている。
人数が多すぎて難しいかもしれないが、フジロックとかで来日したら盛り上がるだろうなあ。
ムンバイ、デリーに住んでいる方、この時期に行かれる予定の方、どちらのフェスも、もし参加されたら感想など教えてください。
記事中にもいくつかリンクを貼りましたが、インドのフェス充実ぶりがわかる他の記事も改めてここに貼っておきます。
今年は記事を書かなかったが、いかにもインド的なフェスとしては、色のついた水や粉をぶっかけあいながら春の訪れを祝うお祭り「ホーリー」と一体とフェスなんかも充実している。
これはコロナ禍の真っ只中の2021年に書いた記事(下の方に正常時のフェスを紹介した記事へのリンクもあります)。
バンガロール(ベンガルール)のEchoes of Earthもかなり雰囲気の良さそうな行ってみたいフェスだ。
かと思えば、辺境の地インド北東部にはメタル好きの血が騒いでしまうフェスもある。
インドのなかでもインディーミュージックが盛んな北東部には、かなり奥地でのこんな超インディペンデントなフェスも行われている。
これ、毎年ラインナップも良くてめちゃくちゃ行ってみたいんだよなあ。
国内と海外のアーティストがどちらも出演するNH7 Weekender.
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2023年08月16日
なぜか今頃発表! The Indies Awards 2022
インドの優れたインディペンデント音楽のアーティストや作品に対して、2020年から表彰を行なっているThe Indies Awardsの2022年版が、先日唐突に発表された。
すでに2023年の8月後半にさしかかったこのタイミングでいったい何故?
もしかしてインドには日本でいうところの「年度」みたいな考え方があるの?(例えば2022年の8月から翌年の7月までを2022年度として扱うとか)
…と不思議に思ったものの、どうやらそういったことはいっさいなく、純粋に2022年以前にリリースされた作品のみが対象とされているようだし、単に選考に時間がかかっていたか、忘れていただけの模様。
インドのインディーズシーンは、まだまだみんなが手弁当で盛り上げているといった感じなので、おそらく選考委員のみなさんも本業を別に持っていたりして、きっと忙しくてこのタイミングになるまで手がつけられなかったんだろう。
なにしろ、ジャンル別アルバム・楽曲、パート別プレイヤー部門など全部で27部門もある本格的な賞なので、選考に時間がかかるのも分かる。
(…かと思ったら、後述の通り、どう考えても2021年にリリースされた作品がたくさん入っていたりして、なんだか訳がわからない)
個別の受賞者は上記のリンクを辿ってもらうとして、主要部門と気になる部門について、いくつか紹介してみたいと思います。
Artist of the Year: Seedhe Maut
アーティスト・オブ・ザ・イヤーに選ばれたのはこのブログでも何度も紹介しているデリーのSeedhe Maut.
確かに2022年のSeedhe Mautはインドを代表するヒップホッププロデューサーSez on the Beatと久しぶりに共作した傑作アルバム"Nayaab"をリリースし、インドのヒップホップの新境地を切り開く大活躍をしていた。
さらに彼らはHiphop/ Rap Song of the Year部門もこの"Namastute"で受賞している。
アレ?この曲、もう1作前のアルバムの曲だけど、リリースいつだっけ?と思って調べてみたら、2021年の2月。
なにがなんだかよくわからなくなって来たけど、名作なのは間違いないのでまあ良しとしよう。
Song of the Year: Sunflower Tape Machine "Sophomore Sweetheart"
やはり2021年の6月にリリースされているこの曲がなぜ2022年のベストソングに選ばれているのかは謎だが、洋楽的なインディーミュージックとしてよくできた曲なことに異論はない。
Sunflower Tape MachineはチェンナイのアーティストAryaman Singhのソロプロジェクトで、この曲は2021年のRolling Stone Indiaが選ぶベストシングルの2位にもランクインされていた。
Sunflower Tape MachineはThe Indies AwardsでもEmerging Artist of the Yearとのダブル受賞。
リリースする楽曲ごとに作風が変わる彼らの魅力は、近々特集して紹介したいところだ。
Album of the Year: Saptak Chatarjee "Aaina"
彼はこれまで知らなかったアーティストだった。
どうもこのThe Indiesは、Rolling Stone Indiaあたりと比べると、いわゆるフュージョン的な、インドの要素を多く含んだ音楽を評価する傾向があるようで、彼も本格的な古典音楽を歌ったりもするシンガーソングライター。
Saptak Chatarjeeはデリーとムンバイを拠点にしているようで、YouTubeでチェックする限り、その実力は間違いなさそうだ。
Music Video of the Year: The F16s "Easy Bake, Easy Wake"
F16sはチェンナイ出身のロックバンド。
ふざけた名前のLendrick Kumar(説明するのも野暮だが、たぶんインドによくいるKumarという名前を、Kendrick Lanarのアナグラム風にしている)によるミュージックビデオは、独特のユーモアと世界観が魅力的。
この曲が収録された"Is It Time to Eat the Rich Yet?"は、Rock / Blues / Alternative Album Of The Yearも受賞している。
ちなみにこのアルバムもやはり2021年の11月にリリースされたもの。
前回のThe Indies Awardsは2022年の12月に発表されているので、ぎりぎりのタイミングだったのかもしれないが、たまに2021年前半の作品が含まれているのが解せない。
他のチェンナイ勢では、フジロックでの来日も記憶に新しいJATAYUの"Moodswings"がInstrumental Music Album Of The Yearを受賞している。
Artwork Of The Year: Midhaven "Of The Lotus & The Thunderbolt"
Metal/Hardcore Song of the Year: Midhaven "Zhitro"アートワーク部門とメタル・ハードコア部門の楽曲賞を両方を受賞したのが、このMidhavenというムンバイのアーティストだった。
不勉強ながらこれまで知らなかったバンドで、先日出版された『デスメタル・インディア』にも掲載されていない新鋭バンドのようだ。
アートワーク部門での受賞となったのがこのサムネイルのイラストで、やはりこの媒体がインド的な要素を嗜好していることを感じさせられるセレクトだ。
楽曲はミドルテンポのよくあるメタルで、それなりにレベルの高いインドのメタルシーンでこれといって特筆すべき部分は感じられなかった。
Electronic/Dance Album of the Year: MojoJojo "AnderRated"
伝統音楽をポップな感覚でダンスミュージックと融合するムンバイのプロデューサーMojoJojoが2021年の10月のリリースしたアルバム。
RitvizやLost Storiesなど、いわゆる印DM(インド的EDM)ではいろんなスタイルで活躍しているアーティストがいるが、彼はちょっとラテンポップっぽい要素があるところが独特だろうか。
ちなみに楽曲部門(Electronic / Dance Song Of The Year)では、ラージャスターンの民謡とエレクトロニックを融合するというコンセプトで活動するBODMASの"Camel Culture"(やっぱり2021年のリリース)が選出されている。
インドのエレクトロニックシーンの評価基準をフュージョンという点に置いているのだとしたら、なかなか興味深いセレクトである。
Folk-Fusion Song Of The Year: Abhay Nayampally "Celebration (feat. Bakithi Kumalo, Hector Moreno Guerrero & King Robinson Jr)"
このAbhay Nayampallyというギタリストもこれまで聴いたことがなかったが、やっている音楽はかなり面白くて、ラテン・カルナーティック・フュージョンとでも呼ぶべき音楽性の一曲。
南アフリカのベーシスト、アメリカのドラマー、ドミニカのキーボーディストが参加しているようで、まさに大陸をまたいだ興味深いコラボレーションを実現している。
もっと多くの音楽ファンに聴かれてほしい曲である。
Pop Song Of The Year: Ranj "Attached"
英語で歌うベンガルールの女性シンガーの作品で、センスよくまとまったポップスとしての完成度はインド基準ではかなり高い。
Rolling Stone Indiaが好みそうな音楽性だと思ったが、Rolling Stone Indiaの2021年のベストシングルには選ばれていなかった。
以前も書いたことがあるが、この手のミドルクラス的ポップスで良質な作品をリリースしているアーティストはインドにそれなりにいるのだが、彼らがターゲットにしているリスナー層は主に洋楽を聴いており、そんなに聴かれていないのが、ちょっともったいない。
他にこのブログで紹介したことがあるアーティストでは、やはりどちらも2021年の作品だが、Easy Wanderlingsの"Enemy"がRock / Blues / Alternative Song Of The Yearに、Prabh Deepの"Tabia"がHip-Hop / Rap Album Of The Yearに選出されている。
それにしてもこんなに2021年の作品が多く選ばれている理由はなんでだろう。
前回(第2回)の選出は2021年の12月に行われているようなので、ほとんどの作品が前回の対象にもなっているんじゃないかと思うのだが…。
なんにせよ、こうして新しいアーティストを知ることができたり、自分が取り上げて来たアーティストがインド国内でも高く評価されていることを知れたりするのはいい機会だった。
来年の発表はいつになるのかさっぱり分からないが、今後も注目してゆきたい音楽賞ではある。
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2023年07月21日
今年のフジロックで来日するインドのバンドJATAYUを紹介! メンバーへのインタビュー
先月インドのヘヴィメタルバンドBloodywoodが大盛況の単独来日公演を成し遂げたが、彼らがここ日本で大きな注目を集めたきっかけは言うまでもなく昨年のフジロックフェスティバルだった。
あれから1年。
Foo FightersやLizzoといった大物アーティストの影に隠れてあまり話題になっていないが、今年のフジロックにもインドのバンドが出演する。
2日目の7月29日にオーガニック/ジャムバンド/ワールドミュージックなどの色彩が強いField of Heavenのステージに3番手として出演するJATAYUである。
JATAYU "Sundowner By The Beach"
インドの大叙事詩ラーマーヤナに登場する鳥の王からバンド名をとったJATAYUは、インド南部タミルナードゥ州チェンナイ出身のインストゥルメンタルバンド。
メンバーは、ギターとカンジーラ/ムリダンガム(後2つはどちらも南インドの伝統的な打楽器)を演奏するShylu Ravindran, ギターとアレンジを手がけるSahib Singh, ベースのKashyap Jaishankar, ドラムス担当で、ときに南インドのカルナーティック古典声楽も披露するManu Krishnanの4人で構成されている。
彼らの音楽は、南インドの古典音楽であるカルナーティック音楽を大胆に導入したギター主体のインストゥルメンタルロックで、一般的にはジャズロックバンドと紹介されることが多いようだ。
確かにジャズっぽい要素もあるし、カルナーティック由来の複雑なリズムはプログレッシブロック的でもあるが、柔らかくて芯のあるギターサウンドとリラックスしたグルーヴは、Steve Kimockのようなギター主体のジャムバンドのようにも感じられる。
JATAYU "Salad Days"
フジロックでは彼らの音楽を初めて聴くオーディエンスも多いと思うが、あたたかみのあるギターと人懐っこいグルーヴに、すぐに体を揺らしたくなることだろう。
じつは彼らは昨年9月に関西地方の4か所での来日公演を行なっていて、日本人ピアニスト矢吹卓との共演も果たしている。
JATAYU "No Visa Needed (feat Taku Yabuki)"
彼らの独特の音楽はどこから生まれたのか?
来日公演やフジロックに出演することになった経緯は?
まだまだ謎が多い彼らにインタビューを申し込んだところ、ギターとアレンジを手がけるSahibから二つ返事で快諾の回答があった。
というわけで、フジロックの隠れた目玉アーティスト、JATAYUに、音楽のこと、地元の音楽シーンのこと、フジロック出演のきっかけなど、たっぷりと聞いてみました。
ーまず、バンドについて紹介してもらえますか?
「JATAYUはShylu(ギター/カンジーラ/ムリダンガム)と僕のベッドルーム・プロジェクトとして始まった。2017年に今のラインナップになるまでに、いろいろな変化を経てきたよ。
バンドメンバーは、リードギターのShylu Ravindran、リズムギターのSahib Singh、ベースのKashyap Jaishankar、ドラムのManukrishnan Uだ。」
ーとてもユニークな音楽性ですが、どんなミュージシャンやジャンルから影響を受けたのでしょうか?
ジャズやカルナーティック音楽はもちろん、Grateful Deadのようなジャムバンドやトランスの影響を感じる部分もあるように感じます。
「JATAYUの音楽は、メンバーの多様な背景や音楽的経験の影響が、魅力的に融合したものだと言える。Shyluはカルナーティック音楽に深く根ざした家族の出身で、Mahavishnu Orchestra, John Scofield, そして伝説的なU Shrinivas(カルナーティック音楽のマンドリン奏者)からインスピレーションを受けている。
彼のギターはカルナーティックの深遠さとモダンジャズの要素のユニークな融合を聴かせてくれる。
Mark Knopfler, Red Hot Chili Peppers, Tom Mischに影響を受けた僕(Sahib)は、ファンクやロックやモダンなインディー音楽のスタイルを融合して、ギターにダイナミックでエネルギッシュなアプローチをもたらしている。
ベースのKashyapの音楽的影響にはThe Beatles, Hyatus Kaiyote、そしてRobert Glasperの革新的なジャズのスタイルが含まれている。彼のグルーヴィーなベースラインは、JATAYUの音楽にスムースでメロディックな感触を加えているね。
Manukrishnanの音楽経歴には、カルナーティックのヴォーカルとムリダンガムの鍛錬が含まれていて、最終的にドラマーになったんだ。彼は、Meshuggahのような偉大なプログレッシブメタルバンドや、ムリダンガム奏者のPalghat TS Mani Iyer, そしてアヴァンギャルド・ジャズのPeter Brotzmannから影響を受けているよ。
こうした個人的な影響が合わさって、ジャンルやスタイルの調和がとれた融合が達成されているんだ。」
JATAYUを育んだチェンナイは、古典音楽の都としても知られているが、彼らのようなインディー音楽のシーンはどのようになっているのだろうか。
ーみなさんの地元であるチェンナイの音楽シーンはどんな感じですか?
F16sやSkratのようなバンドや、Arivuのようなラッパーなど、才能あるアーティストがいるようですが。
「チェンナイのインディペンデント音楽シーンは活気に満ちていて、多くの才能あるアーティストがオリジナリティのあるサウンドで活動しているよ。でも、僕らが直面している課題のひとつは、自分たちの音楽をプロモーションしたり、演奏したりする場が限られているってことなんだ。ムンバイやベンガルール、ハイデラバードみたいなコンサート会場や演奏機会の多い都市に行くこともよくある。
こういった困難な状況だけど、チェンナイのインディー音楽コミュニティの絆は固くて、アーティストたちは互いに支え合って、協力し合っている。
僕とマヌ(ドラムのManukrishnan)は、ArivuとCasteless Collectiveというバンドでコラボレーションしているし、ManuはF16s(4人編成だがドラマーはいない)のアルバムでドラムを披露しているよ。」
続いて、彼らの音楽を特徴づけている南インドの古典であるカルナーティック音楽について聞いてみた。
ーロックとカルナーティックを融合したミュージシャンといえば、元MotherjaneのBaiju Dharmajanがいますね。カルナーティック・プログレッシブ・ロックのAgamも良いバンドです。
カルナーティックとロックの融合にもいろいろなスタイルがあるようですが、インドには他にもカルナーティックとロックを融合したバンドはいるのでしょうか?
「Baiju DharmajanとAgamはロックとカルナーティック音楽の融合に影響を与えた。彼らのユニークなスタイルは、このジャンルの発展に貢献しているね。彼らの他にも、Karnatriixや、Project Mishramのようなアーティストも、カルナーティックとロックを独自のアプローチで融合している。
他に注目すべき存在としては、ヴォーカリストのShankar Mahadevanと古典楽器ヴィーナの奏者Rajesh Vaidhyaもカルナーティック・フュージョンを実践しているミュージシャンだ。」
JATAYUの音楽が気に入った人は、リンク先からぜひそれぞれのアーティストの音楽を聴いてみてほしい。
めくるめくカルナーティック・フュージョンの世界が広がっている。
ちなみにSahibが名前を挙げたShankar Mahadevanはボリウッド映画の作曲家トリオShankar-Ehsaan-Loyの一人としても知られている。
古典音楽からインドのメインストリーム・ポップスである映画音楽、そして実験的なフュージョン(インドでは、古典音楽と西洋音楽や現代音楽を融合したものをこう呼ぶ)をひとりのアーティストの中で共存しているというのもインドならではである。
ーカルナーティック音楽を聴いたことがない人に紹介するとしたら、どのように紹介しますか?
おすすめのミュージシャンがいたら教えてください。
「カルナーティック音楽を聴いたことがない人に紹介するなら、M.S. Subbulakshmi(声楽), D.K. Pattammal(声楽), K.V. Narayanaswamy(声楽), M.D. Ramanathan(声楽), Lalgudi Jayaraman(ヴァイオリン)、Palghat T.S. Mani Iyer(ムリダンガム)といった伝説的なアーティストの作品を探求することをお勧めするよ。
こうしたアイコニックな音楽家たちは、カルナーティック音楽の伝統に多大な貢献をしてきたんだ。現代の音楽シーンでも、T.M. Krishna(声楽)がソウルフルな演奏でカルナーティック音楽の真髄を見事に表現している。彼らの音楽は、カルナーティックの豊かな伝統と美しさを垣間見せてくれるはずだよ」
先ほどのフュージョン音楽と比べると、ガチの古典音楽なのでとっつきにくいところもあるかもしれないが、彼らが歌い奏でる音ひとつひとつの深みや、技巧に満ちたリズムとフレーズが織りなす美しさをぜひ味わってみてほしい。
ーすでに2022年に来日公演をしていますが、これはどういった経緯で決まったことなのでしょうか?
「COVID-19によるロックダウンで、最初は打ちひしがれていたんだけど、僕らは自分たちの音楽を国境を超えて広めてみようと決意した。僕らは積極的に機会を探していて、日本の関西ミュージックカンファレンス(2009年から続く、日本と海外のミュージシャンをつなぐための企画)を見つけたときは興奮したよ。
僕らはそこに応募して、フェスティバルに参加することが決まったんだ。僕らは日本でのパフォーマンスに合わせて、タイでのツアーも計画した。ちょうどそのときに、シンガポールからASEAN Music Showcase Festivalへの出演オファーを受けたんだよ。このイベントへの参加を通じて築いた人々とのつながりが、僕らに新しい扉を開いてくれた。」
ー"No Visa Needed"で共演している矢吹卓と知り合ったきっかけは?
「彼とはオンラインで知り合って、プログレッシブ・ジャズが大好きだっていう共通点から、この曲でコラボレーションすることを決めた。彼とこの曲を作るのはとても簡単だったから、"No Visa Needed"と名付けた。来週、東京で彼と初めて直接会う予定なんだ。フジロックでこの曲を初披露できることを楽しみにしているよ。
ーフジロックへの出演はどのように決まったのでしょうか?
「フジロックのオーガナイザーが、シンガポールで開催されたASEAN Music Showcase Festivalでのパフォーマンスを見て、僕らの音楽を見つけてくれたのがきっかけだった。僕らは自分たちの音楽をより多くのオーディエンスと共有して、世界の音楽シーンのアイコニックなイベントに参加できるチャンスだと思った。フジロック出演を決めたのは、新しいオーディエンスを獲得して、日本の活気ある音楽カルチャーを体験したいっていう僕らの情熱によるものだよ」
ーフジロックでは、昨年デリーのメタルバンドのBloodywoodが大人気を博しました。彼らについてはどう思っていますか?
「インドで彼らの衝撃的なライブパフォーマンスを目撃する機会があった。彼らのエネルギッシュなショーは見るべきだね。彼らのようなインドのインディーズ・バンドが世界で旋風を巻き起こしていることに、僕らは興奮している。インドの音楽シーンが成長して知られてゆく過程を目の当たりにできるのは刺激的だし、僕らもこのエキサイティングなシーンの一部でいられることを光栄に思っている。」
ーあなた方のライブについて伺います。即興演奏の要素は多いのでしょうか?
スタジオバージョンとは異なるものになるのでしょうか?
「スタジオ録音では、それぞれの曲のエッセンスと形式をとらえて、まとまりのある形で表現することを目指している。でもライブパフォーマンスでは、曲の全体像はそのままに、メンバーそれぞれの表現や、曲を進化させる余地を作るようにしているんだ。即興的な部分やソロを取り入れて、演奏に個性的なフレイバーを加えているよ。
さらに、会場の雰囲気や環境も僕らのセットのダイナミズムに大きな影響を与える。僕らはテンポやエネルギーの出し方を調整して、さまざまな雰囲気を作ってオーディエンスにいろんな体験をさせるんだ」
ーフジロックで見ることを楽しみにしているアーティストはいますか?
「フジロックの信じられないようなラインナップを見て興奮は高まる一方だよ。Cory WongやCory Henryみたいな、僕らのバンド全員が尊敬している有名ミュージシャンのパフォーマンスを心待ちにしている。
Foo Fighters, GoGo Penguin, Black Midi, Ginger Root, 他にも数えきれないほどの才能あるアーティストたちの魅力的なパフォーマンスがこのフェスを彩ることに感激しているよ。多様なジャンルと素晴らしい才能が見られるフジロックは、参加した人全員にとって忘れられない音楽の旅になるだろうね」
ーJATAYUが出演するField of Heavenはフジロックで最も美しいステージだと思います。
フジロックであなた方のライブを見る観客に何かメッセージをください。
「Field of Heavenの音楽ファンのみんな、この素晴らしいフェスティバルに参加できて光栄です。才能豊かな日本人アーティストの矢吹卓とのコラボレーション"No Visa Needed"を含む特別なパフォーマンスができることにワクワクしている。みんなと音楽を分かち合うのが待ちきれないよ。See you soon!」
現在彼らは来日前に台湾をツアー中。
それにもかかわらず、全ての質問にたっぷりと丁寧に答えてくれた。
彼らのファンキーなグルーヴに乗せたカルナーティックギターサウンドが、Field of Heavenのステージから苗場の大空に響き渡ったら、最高に気持ちいいことだろう。
去年のBloodywood同様に、JATAYUもインドのインディペンデント音楽シーンの素晴らしさとユニークさを、日本のオーディエンスに存分に知らしめてくれるに違いない。
個人的にも、彼らの柔らかいグルーヴとGoGo Penguinの機械的で硬質なグルーヴが続く2日目のヘヴンは、今年のフジロックの見どころのひとつだと思う。
フジロックのオーディエンスには、まだ見ぬ素晴らしい音楽を体験することを楽しみにしている人が多いことと思うが、それならばこのJATAYUは絶対に見逃せないバンドである。
JATAYU "Marugelara"
追記:
カルナーティック音楽の魅力と世界観を味わうには、ムリダンガム奏者を主人公としたタミル語映画"Sarvam Thaala Mayam"もおすすめだが、今のところ日本語字幕版は配信プラットフォームに入っていないようなので、本文中では触れなかった。
同作は、2018年の東京国際映画祭で『世界はリズムで満ちている』というタイトルで公開されたのち、『響け!情熱のムリダンガム』というタイトルで劇場公開されている。
機会があったら是非見てみてほしい。
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2023年07月18日
ベンガル語ヒップホップがどんどんかっこよくなっている! バングラデシュとコルカタのラッパー特集 2023年度版
インディーズ系音楽を扱うインドのメディアをちょくちょくチェックしているのだが、そうしたメディアに掲載されるのは、デリーやムンバイといったヒンディー語圏のアーティストや楽曲が多く、東インドのベンガル語圏(コルカタあたり)はめったに取り上げられない。
(あと南インドの言語で歌うアーティストの情報もあまり掲載されない傾向がある。インドの大まかな言語分布についてはこの地図を見てみてください)
そんなわけで、コルカタあたりのベンガル語のラップについても、こちらから情報を取りにいかないかぎり、なかなかチェックできないわけだが、以前のベンガリラップ特集からはや3年。
ここに来て、ちょっと垢抜けなかったベンガル語ラップが、かなりかっこよくなっていることに気がついた。
しかも、そのかっこよさの質は、例えばインドの言語の最大勢力であるヒンディー語ラップとは、まったく異なる方向性のものなのだ。
比較対象としたヒンディー語ラップに関して言えば、2010年代中頃にストリートラップのムーブメントが発生し、そのシーンは2019年のボリウッド初のヒップホップ映画『ガリーボーイ』以降、爆発的な成長を見せている。
20年遅れの90年代USヒップホップ的なスタイルで始まったヒンディー語ストリートラップは、10年足らずの間のトラップやオートチューンやローファイなどの要素を取り入れ、世界のヒップホップのメインストリームに3倍速で追いついている。
今のヒンディー語ラップシーンを代表するMC STΔNやSeedhe Mautを聴けば、彼らがこの時代の世界標準的なサウンドを鳴らしていることが分かるはずだ。
ところが、ベンガル語ラップの発展過程はヒンディー語とは大きく異なる。
2010年代中頃に90年代USヒップホップ的なスタイルで始まったところまではヒンディー語ラップと同様だったものの、その後、積極的に新しい要素を取り入れることなく、今も90年代的なスタイルを核に持ち続けており、進化というよりも深化しているのだ。
前置きが長くなった。
さっそく最近のベンガル語ラップを紹介してみたい。
ベンガル語ラップで真っ先にチェックすべきレーベルが、コルカタのJingata Musicだ。
Jingata Musicはインドにおけるジャジー・ラップの金字塔、Cizzyの"Middle Class Panchali"などをリリースしてきた、コルカタを代表するヒップホップレーベルである。
このレーベルが、最近同じベンガル語圏である隣国バングラデシュのラッパーたちをリリースし始めているのだが、これがかなり良い。
バングラデシュといえば、Jalali Setをはじめとする90年代スタイルのラッパーを多く抱えている国だが(なんてことをチェックしているのは俺だけか…)、バングラデシュよりも少し進んだコルカタからの目線で選ばれたバングラデシュのラッパーたちは、なんだかすごくいい感じなのである。
Shonnashi x The Melodian "Gonna BE Alright"
あごひげ長めのムスリムスタイルのラッパーShonnashiと、スムースなファルセットを聴かせてくれるThe Melodianのコラボレーション。
コルカタのレーベルからのリリースだが、全てバングラデシュの首都ダッカの制作陣によって作られた楽曲のようだ。
Shonnashiのラップは、こんなふうに↓英語混じりのベンガル語(何を言っているのかは分からないが)。
ঠিক ঠাক সব will be fine / যত থাকুক সীমানা wanna cross the line
হোক ভুল its cool তাতে কার কি যায় / প্রতিদিন নোয়া feel এই মনটা চায়
90’s的なヴァイブを持ちながらも、K-Popにも近いようなポップ感覚を備えていてとても今っぽい。
ラッパーのShonnashiと楽曲を手掛けたsleekfreqは、Underrated Bangladeshというクルーに所属しているらしいが、まさにunderrated(過小評価、というより存在自体知られていないのかもしれないが)なバングラデシュのヒップホップシーンにふさわしいクルー名と言える。
Critical Mahmood "Life Goes On"
バングラデシュらしいストリート・スタイルで気を吐くのはCritical Mahmood.
ストリートのリアルを子どもたちとともに訴えるスタイルは、インドでは初期の「ガリーラップ」(ムンバイスタイルのストリートラップ)以降、あまり見かけなくなってしまったが、バングラデシュではまだまだ健在。
インドでもバングラデシュでも、経済成長の一方で、格差のしわ寄せが子どもや弱者に行ってしまう現実は今も変わらない。
このコンシャスネスはバングラデシュのラップシーンの美徳のひとつと言えるだろう。
Critical, GxP, Crown E, Lazy Panda, Shonnashi, UHR, SleekFreq "Bat Ey Ball Ey"
Critical Mahmood, GxP, Crown E, Lazy Panda, Shonnashiら、バングラデシュのラッパー総出演の"Bat Ey Ball Ey"は、どうやら国民的スポーツであるクリケットをテーマにした楽曲。
ムンバイあたりだと、どうせ知らないだろうにメジャーリーグの野球チームのシャツやキャップでキメたラッパーもちらほら見かけるが、バングラデシュでは「クリケットってあんまりヒップホップっぽくないんじゃないか」なんてことは気にせずに、ナショナルチームのユニフォームでマイクリレー!
ムンバイ的なスタイルも嫌いではないが、やっぱりこういう音楽においてはリアルであることがいちばん大事なんじゃないだろうか。
この衒いなく素直な感じ、最高じゃないですか。
ちなみにここまでに紹介した3曲のビートを手掛けたのはすべてsleekfreq.
Jingata Musicからリリースされているバングラデシュのラッパーの曲は軒並み彼が手掛けているようで、シーンのカラーを作るのって、ラップのスタイルだけじゃなくてビートメーカーの存在もかなり大きいんだなあ、というヒップホップ初心者としての感慨を新たにした次第です。
Jingata Music以外にもかっこいい曲はたくさんある。
この"NEW IN DHAKA"のミュージックビデオは、4月にリリースされたのち、現在まで2000万回近く再生されている大ヒット。
Siam Howlader, Mr. Rizan "NEW IN DHAKA"
ベンガルの伝統楽器ドタラを使ったビートと会話に近いラップのフロウは、口上っぽい感じもあるが、これはこれでかなりかっこいい。
それにしても、Jingata Musicのミュージックビデオの再生回数が軒並み10万回程度なのに比べると、この曲の人気は文字通り桁違い。
バングラデシュでは、やはりこうした伝統的な要素を持った曲のほうが受け入れられやすいのだろうか。
ここで少しベンガル語圏全体についての話をしてみたい。
バングラデシュとインドの西ベンガル州で話されているベンガル語の話者数は、統計によって差があるが2億5千万人前後いることになっている。
地域別に見ると、ベンガル語話者はインド東部に位置する西ベンガル州が9,000万人強で、バングラデシュが1.7億人弱。
インド東部にあるのに「西ベンガル州」というのは分かりにくいが、それは西ベンガル以東、つまり「東ベンガル」に相当する地域がバングラデシュという別の国になっているためだ。
イギリスから独立するときに、ヒンドゥー教徒が多い西ベンガルはインドの一部となり、ムスリムが多い東ベンガルは、東パキスタンとなったのちに、パキスタンから再び独立してバングラデシュになった。
西ベンガル州の中心都市、コルカタのラッパーたちも、ここ数年でめちゃくちゃかっこよくなってきている。
コルカタを代表するラッパーCizzyの最近のリリースでしびれたのはこの曲。
Cizzy & AayondaB "Number One Fan"
冒頭とアウトロの歌メロ以外は英語ラップだが、このビートといいコード進行といいリリックといい、超エモい。
「自分の最高のファンは自分自身。金や名誉のためじゃなく、自分自身のために音楽を作っているんだ」というメッセージは普遍的で、自身でラップしている通り("Middle Class Panchali")ミドルクラスのアーティストの創作態度としてもっとも誠実なものだろう。
ビートメーカーはAayondaB.
おそらく彼は今コルカタでもっとも勢いのあるビートメーカーで、彼が手掛けた曲はあとでまたちょっと紹介する。
話をCizzyに戻すと、最近の彼はJingata Musicからでなく、完全インディペンデント体制でリリースをしているようだが、その楽曲のクオリティはまったく落ちていない。
コルカタのラッパーShreadeaとAvikと共演したこの曲では、三人ともリラックスした雰囲気ですごい勢いのラップを吐き出している。
Cizzy, Shreader, Avik "Baad De Bhai"
地元で仲間とつるみながらラップスキルの腕比べしてる感じがすごくいい。
ベンガル語ラップはイスラーム圏であるバングラデシュのみならず、コルカタでも女の子が全然出てこないのが特徴で(ムンバイとかデリーのパンジャービー・ラッパーだと、インドで可能な限りのセクシーな女性ダンサーが出てくることがよくある)、このミュージックビデオだと橋のたもとで垢抜けない女の子が二人いっしょにわいわいやってるのがなんだかほほえましい。
この曲のオールドスクールなビートはCizzy自身によるもの。
Cizzyが最高なのは、いつも地元コルカタのことをラップしていることで、タイトルも最高な"Make Calcutta Relevent Again"はローカルなポッドキャストのテーマ曲として作られた曲らしい。
カルカッタは言うまでもなくコルカタの旧名(2001年に改称)で、訳すなら「またコルカタをいい感じにしようぜ」だろうか。
Cizzy "Make Calcutta Relevant Again"
英語とベンガル語で自在に韻をふむフロウもかっこいいが、何より粋なのは彼らが着ているチャイの柄のTシャツだ。
ここで目下コルカタのNo.1ビートメーカーと目されるAayondaBが手がけたCizzy以外の曲をいくつか紹介したい。
WhySir "Macha Public"
曲は1:15頃から。
Cizzyの"Number One Fan"とはうってかわって無骨でヘヴィなビートにWhySirのフロウがいい感じに絡む。
コルカタとはまた違う郊外を映したミュージックビデオがいい感じだ。
西ベンガルのラッパーは、デリーやムンバイと違って、ギャングスタ気取りのコワモテではなくじつに楽しそうにラップしている人が多くて、そこがまたなんか好感度が高い。
Flame C "DA VINCI"
これはまた違った感じの面白いビートの曲。
このFlame Cというラッパーもまた相当なスキルで、ヒンディー語圏だったらもっと有名になっていても良いはずだが、2年前のこの曲の再生回数はたったの1万回くらい。
ベンガル人、もっとラップを聴くべきだ。
AayondaBはYouTubeチャンネルでは地道にタイプビート(有名アーティストに似せたビート)を発表したりしているが、その再生回数は決して多くはない(数十回とか)。
ヒンディー語圏だったらもっともてはやされて良い才能だと思うが、やはりこうしたところにも都市や地域や言語の格差が出てきてしまうのが、インドの面白いところでもあり、少し悲しいところでもある。
ずいぶん長くなった。
この記事もそろそろ終わりに近づいてきたので、CizzyとAayondaBのコラボレーションをもう1曲紹介したい。
Cizzy "Good Morning, India"
ベンガル語ラップの響きも最高だが、この二人によるポップな英語ラップのエモさはちょっと尋常じゃないな。
"I REP"みたいだって言ったら言い過ぎだろうか。
コルカタをはじめとするインド各地を映した映像も最高にエモい。
それにしても、2年前にリリースされたこの曲の再生回数が3,700回以下って、ほんともっとみんなベンガルのラップを聴くべき!(耳ヲ貸スベキ)
さっきもちょっと書いたが、ベンガル語ラップのシーンは話者数のわりにまだまだ小さくて、相当かっこいい曲でも数十万回くらいしか再生されていなかったりすることが多い。
ヒンディー語でラップされてたら10倍から100倍くらい再生されてもおかしくないクオリティの曲でも、なかなか日の目を浴びない現実があるのだ。
今回はバングラデシュと西ベンガルに分けてラッパーを紹介したが、両地域のヒップホップシーンには、国境を越えた交流が存在している。
上述のようにコルカタのJingata Musicはバングラデシュのラッパーもリリースしているし、雑誌TRANSITのベンガル特殊号(TRANSIT59号 東インド・バングラデシュ 混沌と神秘のベンガルへ)に掲載されているCizzyのインタビュー(インタビュアーはU-zhaanさん)でも、彼はバングラデシュにお気に入りのラッパーがいると語っている。
実際に両地域のラッパーによるコラボレーションも行われている。
コルカタのWhySirは、佐々木美佳監督のドキュメンタリー映画『タゴール・ソングス』にも登場したダッカのラッパーNizam Rabbyと共演していて、プロデューサーはなんとCizzy!
WhySir "Shomoy" ft. Nizam Rabby
宗教の違いや経済格差など、さまざまな理由によって、共通する文化や言語を持ちながらも微妙な関係の西ベンガルとバングラデシュだが、こうしてヒップホップという新しいカルチャーによる交流が進んでいるのだとしたら、こんなに美しいことはない。
ベンガル語ラップシーンについては、またちょくちょく紹介してみたいと思います。
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