2023年03月14日

スヌープ・ドッグ! カイリー・ミノーグ! Akon! Nas! 世界的スターを起用したボリウッド映画の曲を紹介


3月13日(月)のJ-WAVE 'SONAR MUSIC'「インド映画音楽特集」でいろいろ紹介してきました!
本当はもうちょっとヒンディー語(=ボリウッド)以外の曲ももっと紹介したかったのですが、オンエアするためのいろいろな条件が合わず、ちょっと偏っちゃったかな、とも思ってます。
サウスを期待していたみなさん、ゴメンネ。
あと、ラジオ映えする曲に絞って選曲したので「なんであの曲がないんだ!」とか「なんであの映画の話がないんだ!」という方も、ゴメンナサイ。

今回は番組では紹介しきれなかったテーマでお届けします。


いまや経済成長著しいインドのエンタメのメインストリームである映画のもつ資金力はすさまじく、インド最大の制作本数を誇るヒンディー語のエンタメ映画(いわゆるボリウッド)では、ミュージカルシーンに使われる楽曲に、世界的に有名なアメリカやイギリスのシンガー/ラッパーが起用されることもある。
というわけで、今回は、あっと驚くようなアーティストが参加したボリウッドの曲を紹介!


まずは、言わずと知れたウェッサイの大物、Snoop Doggが起用された、2008年の映画"Singh is Kinng"のテーマ曲。

Snoop Dogg, RDB & Akshay Kumar "Singh is Kinng"


アクシャイ・クマール主演(彼の名前はこの曲にもクレジットされている)、カトリーナ・カイフがヒロインを務めたこの映画は、オーストラリアの裏社会で暗躍するシク教徒のマフィアのボスと、パンジャーブの田舎街に住む彼の純朴な弟との関係を軸にしたアクション・コメディということらしい。
監督は「コメディの帝王」と呼ばれているというアニース・アズミー。
映画の情報は、arukakatさんこと高倉嘉男に詳しく記載されている。


ターバン姿で知られるシク教徒は、イギリスやカナダ、アメリカへの移住者も多い。
彼らは'90年代に伝統音楽の「バングラー」とヒップホップを結びつけたスタイルを生み出し、それはやがてインドのメインストリーム・ラップの原型となった。



この曲でスヌープと共演しているのは、そうした英国産インド系ヒップホップのオリジネイターのひとつであるRDB.
楽曲制作もスヌープとRDBの共作で行われたようだ。
アッパーなビートとスヌープのレイドバックしたフロウが生むギャップが面白い。
曲はまあ、ラップとしてもバングラーとしても弱いが(そもそもバングラーではないし)、映画のラストとかに流れたらちょっと面白いかな、とは思う。

スヌープ起用の理由は今ひとつわからないが、彼のギャングスタ・ラッパーとしてのイメージがマフィアをテーマにしたこの映画とマッチしたからだろうか。
2008年といえば、インド国内のヒップホップシーンはまだ極めてアンダーグラウンドだった。
というか、この時期から活動していたラッパーはほとんどおらず、シーンと呼べるものが存在していたかどうかすら怪しい。
当然、ヒップホップ界のスーパースターであるスヌープの認知度もインドでは低かったはずで、そう考えると大金を投じて彼を起用する理由は見当たらないが、もしかしたら、海外在住のシク教徒のマーケットを見据えたものだったのかもしれない。
イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリアには、合わせて200万人弱のシク教徒が在住している。

ちなみにRDBはシク教徒のホッケー選手を主人公としたカナダ映画"Break Away"でリュダクリスとも共演している。
ラップとヒンディーポップの融合という意味では"Singh is Kinng"と同じスタイルだが、インド映画とカナダ映画でのサウンドの違いを味わってみるのも一興。

Ludacris, RDB "Shera Di Kaum"


ちなみにこの映画には現在カナダ国籍を持っている前述のアクシャイ・クマールがプロデューサーとして名を連ねており、カメオ出演もしているとのこと。
この映画は"Speedy Singh"というタイトルでヒンディー語に吹き替えられてインドでも公開された。



続いては、2009年の映画"Blue"からの曲。
起用されているのは1980年台から活躍するイギリスの人気シンガー、カイリー・ミノーグ。

Kylie Minogue, Sonu Nigam "Chiggy Wiggy"


この映画はサンジャイ・ダット主演の海洋アクションで、共演にさっきの"Singh is Kinng"にも出演していたアクシャイ・クマールも名を連ねている。
監督はアントニー・デスーザという人で、当時としてはかなりの予算をかけて作られた作品のようだが、前述のarukakatさんによると、出来はイマイチだったようだ。


音楽を担当しているのは現代のインド映画音楽界の第一人者A.R.ラフマーン。
彼のポピュラー音楽作家としての力量を存分に感じることができる出来栄えだ。
中盤以降にバングラー/ヒンディーポップ的なアレンジを入れてちゃんとインドの観客を喜ばせることを忘れないのもプロフェッショナル。

この曲におけるカイリー・ミノーグの起用理由は、おそらくカリブの海を舞台にした作品の雰囲気に合うこと、そして中産階級をターゲットにした映画としても適切な人選だからといったところだろう。
インド都市部の英語で教育を受けた人々は、いわゆる洋楽嗜好が強い。
また、'00年代初頭に再燃したカイリーの人気がちょっと落ち着いた時期で、オファーしやすかったということもあったかもしれない。


Akon(エイコン)が英語混じりのヒンディー語で歌うのは、シャー・ルク・カーン主演の2011年のSFアクション映画"Ra.One"の曲。

Akon, Vishal Dadlani, Shruti Pathak "Criminal"


arukakatさんによる映画情報はこちらからどうぞ。


この映画の楽曲を手掛けているのは、Vishal-Shekhar.
英語ヴォーカルで歌うムンバイのヘヴィロックバンドPentagramのヴォーカリストVishal Dadlaniと、映画音楽作家のShekhar Ravjianiによるコンビで、この2人は2000年以降のボリウッド作品に洋楽的センスを持ち込んで人気を博している。
'00年代に"Locked Up"や"Lonely"などいくつものヒット曲をリリースし、レディ・ガガの才能を見出したことでも知られるAkonだが、この曲にはキツめのオートチューンがかかっているし、劇中のミュージカルシーン(ミュージックビデオ)では最初にちょっと出演しただけでシャー・ルクの口パクになってしまうというし、けっこうひどい扱いをされている。



Akon "Chammak Challo"



"Ra. One"ではこの曲もAkonが歌っているが、今度は映像にもいっさい登場せず、はっきりいってほとんどAkonの無駄遣いともいえる。
でもYouTubeのコメントを見る限り、彼が流暢なヒンディー語で歌っていることに対してインドのリスナーは概して好意的に受け止めているよう出し、まあいいのか(この曲にはタミル語も混じっているようで、タイトルはパンジャービー語で「セクシー・ガール」の意味とのこと)。

この映画にAkonが起用された理由はやはり謎だが、この映画をリリースした2011年当時、彼は少しずつ「往年の人気シンガー」になりつつあり、ここでも「知名度の割に起用しやすかった」という理由はあったものと思われる。
また、この映画がかなりハリウッドを意識した作風であったことから、もしかしたら世界市場を見据えての起用だったのかもしれない。


それはともかく、"Ra.One"のサウンドトラックでは、"Stand By Me"を引用した"Dildara"が白眉だった(この曲にはAkon不参加)。
Shafqat Amanat Ali "Dildaara"


そういえばボリウッドではロイ・オービソンの"Oh, Pretty Woman"を引用した曲もあった。

Shankar Mahadevan & Ravi 'Rags' Khote "Pretty Woman"


こちらは2003年に公開された、アメリカが舞台のヒット映画"Kal Ho Naa Ho"に使用された曲。
音楽を手掛けているのは90年代のボリウッドに洋楽的センスを持ち込んだトリオShankar-Ehsaan-Loy.
ちょうどVishal-Shekharの一昔前に同じようなことをやった人たちと言えるが、Vishal-ShekharにしてもShankar-Ehsaan-Loyにしても、その気になればオールドスクール・ボリウッド的な楽曲を作ることもできるというのがやはり人気の秘密なのだろう。
もちろん、ラフマーンも然りである。
ちなみにShankar-Ehsaan-LoyのひとりLoy Mendonsaの息子Warren Mendonsaは、ピンク・フロイドのデイヴ・ギルモアみたいなスタイルのギタリストとして、映画音楽ではなくインディー音楽シーンで活躍している。

話がそれた。
洋楽を引用した曲の紹介じゃなくて、洋楽のスターが参加した曲の紹介をしていたんだった。

次はこれ。
Nasが起用された2018年のヒップホップ映画"Gully Boy"のエンディングテーマで、映画のモデルになったムンバイのラッパーたちとの共演。
Nas feat. DIVINE, Naezy, Ranveer Singh "NY se Mumbai"



劇中にこそ出演しないものの、この映画はムンバイで行われるNasのライブの前座を目指すラップバトルがクライマックスになっていて、Nasの名前は映画のエグゼクティブ・プロデューサーとしてもクレジットされている。
とはいっても、これは映画制作にはかかわっていない「名誉職」で、Nasは試写を見て感動して自らの名前をエグゼクティブ・プロデューサーとして冠することを申し出たという。
このエピソード、てっきり映画のプロモーションのために作られた話かと思っていたのだが、この曲はサントラには収録されておらず、少し遅れてリリースされているから、もしかしたら本当なのかもしれない。ビートを手掛けているのはトロントのインド系デュオXD Proとジャマイカ人のIll Wayno.
90年代のニューヨークの雰囲気と、ムンバイのガリーラップのノリを兼ね備えたいい感じのビートだと思う。

映画については、公開当時にかなり血圧高めの記事をたくさん書いたので繰り返さない。


今でも大好きな映画である。


余談となるが、ヒンディー語以外の言語の映画に海外の歌手を起用するだけの予算がないわけではなく、例えばヒンディー語映画に次ぐ制作本数を誇り、『バーフバリ』や『RRR』を生み出したテルグ語映画でも、その気になれば世界的に有名な(かつての)人気シンガーを起用することも可能だろう。
おそらくだが、ヒンディー語(ボリウッド)映画以外でこうした傾向が見られない理由は、海外在住のインド系住民や、あわよくば外国人にも売り込もうという意識の強いボリウッドと、ローカル色を重視するサウスの映画の傾向の違いなのではないかと思う。
しかし映画には詳しくないので、実際のところはよく分からない。



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2023年03月05日

インドの古典/伝統音楽と電子音楽の融合 2023年版「印DM」!


先日、インドの無国籍風電子音楽と派手めのEDMを紹介する記事を書いたので、今回はいかにもインドらしい、インド要素を多分に含んだ電子音楽を紹介することにしてみたい。




取り扱うジャンルは、テクノ、エレクトロニカ、アンビエント、トラップ、ベースミュージックといったあたり。

何度も書いていることだが、インドでは古典音楽や伝統音楽と西洋音楽を融合したスタイルのことを「フュージョン」と呼ぶ。
フュージョンはジャズやロックやヒップホップなど、あらゆるジャンルで行われていて、もちろん電子音楽も例外ではない。
フュージョン電子音楽で面白いのは、もともとエレクトロニック系のアーティストが古典/伝統音楽を取り入れるのではなくて、古典/伝統音楽系のアーティストが電子音楽に進出している例が見られること。
例えば、コルカタ出身の女性シンガーIsheeta Chakrvarty.
北インドの古典音楽ヒンドゥスターニーの声楽をベースにしたフュージョンシンガーである彼女は、ゴア出身のDJ/プロデューサーのAnyasaと共演して、フュージョンテクノのアルバムを発表している。

Anyasa & Isheeta Chakravarty "Rasiya"


以前紹介したBlu Atticもそうだが、インド人アーティストの電子音楽と古典の融合はものすごく自然で、欧米のアーティストがエキゾチシズムの借用としてインド音楽を引用するときのようなわざとらしさや違和感がまったくない。



まだハタチのReeshabh Purohitは、5歳からヒンドゥスターニー音楽を学び、今ではボストンの名門バークリー音楽大学に通う才能あふれるシンガーだ。
古典風歌謡やボリウッドのカバー曲も歌うReeshabhだが、この"The Flight"はヴォーカルをメインに据えつつも、電子音楽との融合を試みている。

Reeshabh Purohit "The Flight"



もちろんフュージョン電子音楽の可能性は声楽だけでない。
シタール奏者であるRishab Rikhiram Sharmaは、ローファイ・シタールというものすごく気持ちいい新境地を切り開いている。
この"Wyd Tonight?"は、ローファイ系プロデューサーでもあるギタリストのRajと共演。

Rishab Rikhiram Sharma "Wyd Tonight?" feat. Raj


この"Raanjhana"ではヴォーカルも披露.
Rishabは古典音楽一家に生まれ、あのラヴィ・シャンカルの最後の弟子だという本格派。

Rishab Rikhiram "Raanjhana"


ここまでで何が言いたかったのかというと、インド音楽と電子音楽は、もちろん全く別のバックグラウンドから生まれた音楽だが「いかにして心地よい音を出すか」という点で、共通した志向性を持ったものだということだ。(「どのジャンルの音楽もそうじゃないか」と言われそうだが、ここではメロディーやコード進行よりも、一音の鳴り/響きを重視しているということを言っている)
タブラやムリダンガムが人力ドラムベースと言われるように、インド音楽はリズムの面からも電子音楽との親和性がある。
私が「印DM」と呼んでいるインドの電子音楽フュージョンには、つまり根拠と必然性があるのだ。
「フュージョン」は、純粋に古典音楽のみを追求している演奏者やリスナーからは、まがいもの扱いされることもあるのだが、混じり気のない古来の様式からフュージョンまで、幅広く解釈/表現可能なところがインドの音楽の懐の広さと素晴らしさだと、個人的には思っている。

ここから先はクラブミュージック寄りアーティストが作る印DMをいくつか紹介してみたい。


Tech Panda & Kenzani "Sauda"


ニューデリーを拠点に活動しているデュオ、Tech Panda & Kanzaniもフュージョン・テクノをリリースし続けているアーティストで、この"Sauda"は、曰く「ノスタルジーとミニマル・テクノの融合」とのこと。


Rusha & Blizza X Tech Panda & Kenzani "Dilbar"


Tech Panda & Kenzaniこの曲で共演しているRusha & Blizzaもインドを拠点に活動しているフュージョン電子音楽デュオ。
この曲は17世紀のパンジャーブの詩人Bulleh Shahによる歌をアレンジしたもの。
400年前の曲を普通に電子音楽にアレンジできる国というのはなかなかないし、実際にやってしまうのもすごい。


Rusha & Blizza  "Huzur"


この曲は1968年の映画"Kismat"で使われた曲をサンプリングしているそうで、こうして聴いてみると、古典音楽から大衆音楽である映画音楽、そして欧米から来た新しい音楽である電子音楽がシームレスに繋がっていることがよくわかる。

こんなふうにトラップ的なアレンジがされることもあって、本当にインド音楽の解釈は無限大だなあと実感する。

Rusha & Blizza "Saiyaan"



Rusha & Blizza, Gurbax, Rashmeet Kaur "Aja Sawariya"


この曲で共演しているGurbaxは以前も紹介したフュージョン・トラップのアーティスト。
当時なんのことだか分からなかった「ターバン・トラップ」は、どうやら単なるYouTubeチャンネルの名前だったらしい。



もちろんインドの古典楽器はアンビエント的な解釈とも相性が良い。
このHashbassは元ベーシストで、古典音楽とは全く異なるバックグラウンドを持つわけだが、結果的にさっき紹介したシタール奏者のRishab Rikhiram Sharmaと同じようなアプローチになっているのが面白い。

Hashbass "Lotus"


この曲は印DM的な要素はないが、レトロウェイヴ的な感触があってなかなか面白い。
前回の記事で紹介しておけばよかった。

Hashbass "16 Bit"



というわけで、全方位的にまだまだ面白くなりそうなインドの電子音楽シーン、今後もまた定期的に紹介してゆきたいと思います。



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2023年02月21日

2022〜23インド冬フェスシーズン 最も多くの出演したのは?


夏フェスがポピュラーな日本とは異なり、インドの音楽フェスティバルのシーズンは冬。


インドのインディペンデント系音楽メディアSkillboxに、2022〜23年のシーズンに最も多くフェスに出演したインディーアーティスト・トップ10を紹介する記事がアップされていた。
これがなかなか面白かったので紹介したい。
(元記事はこちら

この記事によると、1位に輝いたのは、プネーのドリームポップバンドEasy Wanderlingsで、8つのフェスに出演したとのこと。

出演したフェスの内訳は、Bacardi NH7 Weekender (プネー), Bloom In Green (クリシュナギリ), Echoes Of Earth (ベンガルール), Idli Soda (チェンナイ), India Bike Week (ゴア), Lollapalooza India (ムンバイ), Vh1 Supersonic (プネー), Ziro Festival of Music (ジロ)。

南インドのチェンナイやベンガルールから、北東部の最果てアルナーチャル・プラデーシュ州のジロまで、まさにインド全土を股にかけたということになる。
クリシュナギリという地名は初めて聴いたが、南インドタミルナードゥ州(州都はチェンナイ)の地方都市だ。
その郊外で行われたBloom in Greenは、人力トランスバンドや無国籍風ワールドミュージックアーティストが出演したオーガニック系の自然派フェスティバルだったようだ。
これまで南インドのフェスはあまり取り上げていなかったが、改めて調べてみると、結構面白そうなイベントが開催されている。

今シーズンのフェス出演映像は見つからなかったので、2017年のNH7 Weekender出演時の様子をご覧いただきたい。


このブログでも何度も取り上げてきたEasy Wanderlingsは、曲良し、歌良し、演奏良しの素晴らしいバンドで、彼らが1位というのは納得できる。
野外で彼らのオーガニックなサウンドを聴けたら最高だろう。
日本でもフジロックか朝霧JAMあたりで見てみたい。

冬フェス出演回数2位には、6組のアーティストが該当している。
それぞれの出演フェスティバルも合わせて紹介すると、
  • Anuv Jain
    Bacardi NH7 Weekender (プネー), Beat Street (ニューデリー), Doon Music Festival (デラドゥン), SteppinOut Music Festival (ベンガルール), Vh1 Supersonic (プネー), Zomaland (ハイデラーバード), Zomato Feeding India (ムンバイ)
  • Bloodywood
    Bacardi NH7 Weekender (プネー), Indiegaga (コチ), Lollapalooza India (ムンバイ), Mahindra Independence Rock (ムンバイ), Oddball Festival (ベンガルール、デリー), Rider Mania (ゴア), The Hills Festival (シロン)
  • Peter Cat Recording Co.
    Gin Explorers Club (ベンガルール), India Cocktail Week (ムンバイ), Jaipur Music Stage (ジャイプル), LiveBox Festival (ベンガルール), Rider Mania (ゴア), Vh1 Supersonic (プネー), Ziro Festival of Music (ジロ)
  • Thaikkudam Bridge
    GIFLIF Indiestaan (ボーパール), Idli Soda (チェンナイ), Indiegaga (ベンガルール、コーリコード), Mahindra Independence Rock (ムンバイ), Rider Mania (ゴア), Signature Green Vibes (ハイデラーバード), South Side Story (ニューデリー)
  • The Yellow Diary
    Beat Street (ニューデリー), Doon Music Festival (デラドゥン), LiveBox Festival (ムンバイ), Lollapalooza India (ムンバイ), Oktoberfest (ムンバイ), SteppinOut Music Festival (ベンガルール), Zomaland (アーメダーバード、ハイデラーバード、ニューデリー)
  • When Chai Met Toast
    India Cocktail Week (ベンガルール), Indiegaga (コチ), International Indie Music Festival (コヴァーラム), North East Festival (New Delhi), Parx Music Fiesta (Mumbai), SpokenFest (Mumbai), Toast Wine and Beer Fest (Pune)

詳細はアーティスト名のところからリンクを辿っていただくとして、ここではこれまでこのブログで取り上げたことがない人たちを紹介したい。
Anuv Jainはパンジャーブ出身の主にヒンディー語で歌うアーバン・フォーク系シンガー。
2018年のデビュー曲の"Baarishein"で一気に注目を集め、この曲、まったく絵が動かないシンプルなリリックビデオにもかかわらず、YouTubeで5,000万回以上も再生されている。


歌詞はわからなくても、彼の非凡なメロディーセンスが理解できるだろう。
ヒンディー語がとっつきにくいという人は、こちらの英語曲"Ocean"をどうぞ。

アレンジに関しては、弾き語りというか、最小限のバッキング以外は入れない方針っぽいのが潔くもあるし、少しもったいない気もする。

The Yellow Diaryはムンバイ出身のインド・フュージョンっぽいポップバンドで、2021年にリリースしたこの"Roz Roz"という曲のYouTubeでの再生回数は1,000万回を超えている。



ちなみにこの後には8位タイとして、6つのフェスに出演したParvaaz(ベンガルール出身のヒンディー語で歌うインディーロックバンド)、Taba Chake(北東部アルナーチャル・プラデーシュ出身のウクレレ・シンガーソングライター)、The F16s(チェンナイ出身のロックバンド)、T.ill Apes(ベンガルール出身のファンク/ヒップホップバンド)の4組が名を連ねている。

元記事を書いたAmit Gurbaxaniは、この統計を取るために50以上のフェスティバルを調べたとのこと。
そのうち2つ以上のフェスにラインナップされていたアーティストは70組以上。
オーガナイザーの話では、出演者選定の理由は、
  • 人気があること
  • ストリーム数、動員、ソーシャルメディアの活躍
  • 開催地が地元の場合、しっかりとしたファン基盤があること
  • ヘッドライナーのアーティストとの相性を考慮
だそうで、まあこれは世界中共通だろう。
典型的なメタルバンドはラインナップしづらいけど、Bloodywoodみたいな個性のある面白いバンドは例外とのことで、なるほど、彼らは日本でいうところのマキシマム・ザ・ホルモンみたいな存在なのだろう。
それにしてもBloodywoodは欧米でも日本でも母国でも、フェス人気がかなり高いようだ。

DIVINEPrateek KuhadRitvizといった人気アーティストの出演が少ないのは、独自のツアーが忙しいからだそうで、これも世界共通の傾向だろう。

最後に今シーズンのフェスの映像をいくつか紹介してみたい。

まずは、南インド各地で行われた巡回型フェスティバルIndiegagaから、ケーララ州コチ会場のBloodywoodのライブのアフタームービー。


続いて同じIndiegagaでも、こちらはコーリコード会場から、地元ケーララのThaikkudam Bridgeのライブの模様。


ベンガルールで行われたOddball Festivalのアフタームービー。


プネーの大型フェスNH7 Weekenderから、When Chai Met Toastのライブの様子。



今回紹介したのはロック系のフェスが中心になってしまったが、EDMやヒップホップが優勢に感じられるインドで、ロックも根強い人気を保っていることが確認できた。
インドのフェス、ほんとそろそろ遊びに行きたいんだよなあ。



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2023年02月15日

インドのインディペンデントEDMポップ特集!


またしてもあまり詳しくないジャンルについて書くことになってしまうのだが、という前置きをまずさせてもらうとして…

前回の記事で、「インドでも狭義のEDMは下火になり、云々」と書きましたが、ごめんなさい、ウソでした。
インドではEDMはまだまだ元気です。
(ところで、「狭義のEDM」というのはビッグルーム系と呼べばいいのか、このあたりのサブジャンルの呼称がいまいちよく分からない)



いや、もちろん一時のEDMブームが去ったのは事実で、前回書いた通り、メジャーどころのアーティストは別ジャンルに転向しちゃってるし、かなりEDM色が強かったコマーシャルなラッパーたちも、最近はもうちょっと落ち着いたビートの曲をリリースするようになってきている。
インドでも、EDM人気のピークは確実に過ぎている。

5年くらい前を思い出してみると、パンジャービーのGuru RandhawaからタミルのVandana Voxまで、インドじゅうのポップシンガーがEDMテイストの曲をリリースしていた。
あの頃の狂騒は過去のものになったとはいえ、EDMそのものが死んだわけではない。

というわけで、今回は、巨大フェスでこそ映えそうな華やかな楽曲をベッドルームから発信しているまだまだマイナーなインディペンデント系EDMアーティスト(EDM影響下のダンスポップを含む)たちを紹介してみたい。


Xadrian, AISKA, Julian Black "In The End"


まず1人めは、ハイデラーバード出身のXadrianことVarri Pavan Kumar.
お聴きの通り、これぞビッグルームというサウンドには、インド的な要素はどこにも見当たらない。
共演しているAISKAとJulian Blackはオランダのハウス/EDM系アーティストだそうで、この手のジャンルは海外勢とのコラボレーションが頻繁に行われているのも特徴だ。

Xadrian "Drowning"


ソロ作品のこの曲はちょっと往年のDaft Punkみたいな感じもある。


Shivam Bhatia, Sara Solstice "God In Your Eyes"


Shivam BhatiaはDavid GuettaやChain Smokersらの影響を受けているというデリーのEDM系アーティスト。
彼もまたいろんな国のミュージシャンと共演していて、この曲でコラボレーションしているSara Solsticeはアメリカのシンガーらしい。
曲のテーマはドラッグ。
映画の飲酒シーンにいちいち「アルコールは健康を損ねます」という字幕が出てくるインドでも、クラブミュージック界隈では、ドラッグに関する表現はあまりタブー視されていないのか。
サビでは十字架のモチーフが出てくるが、インドの人たちがこの曲を聴いてどんな'God'をイメージするのか、気になるところではある。


31Stars "Catch A Vybe"


31StarsはAman VanjaniとJay Punjabiの二人組で、どうやらイギリスで音楽活動を始めたのちにインドに拠点を移したようだ。
インドの音楽シーンではよくあることだが、EDMでも、アメリカやイギリス在住のインド系住民や、留学などで欧米生活を経験した者が、欧米の最先端のトレンドを国内に輸入する役割を担っている。
そうして国内に持ち込まれたサウンドが、本場から少し遅れて流行するわけだが、インターネットの普及以降、そのタイムラグはどんどん縮まってきているように思える。
(ちなみにEDMシーンのトップアーティストの一人、KSHMRはインド系アメリカ人)

ここまで読んで分かるとおり、この手のジャンルには国籍や国境というものは基本的に存在しない。
踊れて心地よいサウンドこそが正義というハイパーモダンな価値観が、EDMの面白い部分でもあり、つまらない部分でもあるわけだが、後述の通り、それでもやはりその土地の特徴というものは出てきてしまう。


Judy on the Run ft. Cherish Benhotra "Move To Canada"


これはクラブミュージック的というよりも、もっとぐっとポップな曲調。
サウンドは例によって無国籍EDMマナーだが、注目すべきはその歌詞だ。
男女デュエットになっているこの曲は、カナダへの移住をめぐるカップルの対話という、非常にインド的なテーマの楽曲なのだ。
現実的な理想を追い求める女性と、愛国心の強い楽天家の男性とのやりとりは、まるでインド映画の一場面を見ているようだ。
ミュージックビデオの雰囲気にすごくリアリティを感じるが、この二人はリアルにつきあってるのかなあ、とか下世話なことを勘繰りたくなってしまう。


Rohit Nigam "Baawray"


歌詞がヒンディー語になると、歌の響きが一気にインドっぽい印象になる。
デリーの街並みを舞台に踊りまくるミュージックビデオがいい。
彼は影響を受けたミュージシャンとして、John Mayer, Ed Sheeranにと並んで、インドのシンガーソングライターPrateek Kuhadの名前も挙げている。
この手のミュージシャンが挙げるアーティストは洋楽一辺倒になりがちだが、やはりソングライターとしてもロールモデルとしても、Prateekの存在感は群を抜いているようだ。


Frntflw "Rainaa"


Frntflwはマハーラーシュトラ州内陸部の都市ナーグプル出身の二人組。
古典音楽っぽい女性ヴォーカルをフィーチャーした、いわゆる「印DM」で、過去に戻りたいと願う潜在意識をテーマにしているとのこと。
ムンバイやデリーのような大都市ではなく、大きめの地方都市といった印象のナーグプルからこの手のサウンドが出てくるのは意外だが、それだけEDMがインドじゅうに浸透しているということなのだろう。


Cyrus Berne "Lorna"


こちらは珍しいコンカニ語(ゴア地方の言語)のEDMポップ。
都市部のミドルクラスとはまた違う、ちょっとラテンっぽさの入った解放的なローカル感がこの地域の魅力だ。
かつてはトランスの聖地として海外のトラベラーを惹きつけたゴアは、今ではインドのダンスミュージックの一大拠点である。
"Hide and Seek"という曲ではポルトガルのEDMアーティストTh3 Darpeと共演しているが、かつてゴアがポルトガル領だったことと何か関係があるのだろうか。


Nurav "Get The Vibe"


こちらはコルカタのアーティストによる曲。
ビッグルーム的EDMというよりは、印DMベースといった印象だが、東部のコルカタにもEDMの波が到達して、しっかりローカル化している一例として挙げてみた。



Priyanx, Hellish & Someone Else "Nothing But Time"


Priyanxはまだ二十歳を過ぎたばかりの新進プロデューサー。
共演しているHellishは、インドでは珍しいちょっとゴスな要素もあるダークポップっぽい音楽をやっているまだ10代の女性シンガーで、もうひとりのSomeone Elseはダークなベースミュージックをスタイルとする若手アーティスト。
若干単調ではあるが、きらびやかな中にもちょっと影のあるサウンドは、インドの新世代ダンスポップと言えるかもしれない。



というわけで、今回はインド各地のインディペンデント系EDMアーティストを紹介してみた。
今後もEDMは、世界でもインドでも、トランスのように一部のパーティーフリークから愛され続けるジャンルとして生き延びていくのだろう。
若干ステレオタイプな言い方になるが、ダンスが大好きで派手なサウンドに人気が集まるインドでは、EDMはまだまだ一定の人気を保ってゆきそうだ。
インドのEDMシーンについては、今後もちょくちょく取り上げてみたい。




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2023年02月09日

インドのアンダーグラウンド電子音楽シーンの現在


ここ数年ですっかり耳にすることが少なくなったジャンル名といえば、EDMだろう。
2010年代、ド派手かつキャッチーなサウンドで世界中を席巻したEDMの波は、もちろん踊ることが大好きな国インドにも到達した。
ゴアやプネーでは世界で3番目の規模のEDMフェスティバルSunburnが開催され、数多くの世界的DJが招聘されてインドの若者たちを踊らせた。
インド国内にもLost StoriesやZaedenのように海外の大規模フェスに出演するアーティストが現れ、シーンはにわかに盛り上がりを見せた。




ところが、アヴィーチーが亡くなった2018年ごろからだろうか。
世界中の他の地域と同様に、インドでもEDMブームは下火になってゆく。
Lost Storiesは派手さを排除したポップ路線へと転向、Zaedenに至っては、なんとアコースティック寄りのシンガーソングライターへと転身してしまった。
(どうでもいい話だが、アヴィーチーというアーティスト名はインドと縁があり、「無間地獄」を意味するサンスクリット語から取られているらしい)

一応ことわっておくと、ここで言っているEDMというのは、KSHMR(彼はインド系メリカ人だ)とかアヴィーチーみたいないわゆる「狭義のEDM」の話で、インドを含めた英語圏で使われる「踊れる電子音楽全般」という意味ではない。
広義のEDMはもちろんまだ生きていて、以前も書いた「印DM」(軽刈田命名)のように、インドで独自に進化しているのだが、その話はまた今度。




今回書きたいのは、こうしたポップ路線からは離れたところに存在する、もうちょっとアンダーグラウンドな音楽シーンのことだ。
2000年ごろから活躍するパイオニアMidival Punditzをはじめ、インドは数多くの電子音楽アーティストを輩出した国でもある。
当たり前だが、巨大フェスのメインステージだけがシーンではない。
今回は、インドの面白い「草の根的」電子音楽をいろいろと紹介してみたい。
(古典音楽の要素を融合したフュージョン系エレクトロニカも非常に面白いのだけど、面白すぎるのでこれもまた機会を改めることにして、今回は無国籍なサウンドの電子音楽アーティストを特集する)


Dreamhour "Light"


シンセウェイヴのDreamhourは、インド東部ベンガル州の北のはずれ、シリグリー出身のDobojyoti Sanyalによるソロプロジェクト。
西にネパール、東にブータンがあり、北には1975年まで独立国だったシッキム州をのぞむシリグリーは、私の記憶にある25年前は、これといった面白みのない辺境の田舎街だった。
あの街からまさかこんな拗らせたスタイルのアーティストが出てくるとは思わなかったなあ。

Dreamhour "Until She"


DreamhourはニューヨークのNew Retro Waveというレトロ系シンセウェイヴ専門のレーベルから作品をリリースしていて、この手のマニアックなサウンドになるともう国境も国籍も全く関係ないという好例と言えるだろう。
Sanyalは女性ヴォーカリストをフィーチャーしたDokodokoというプロジェクトでも活動している。


OAFF "Perpetuate"


大阪アジアン映画祭と同じ名前のアーティストOAFFは、ムンバイのKabeer Kathpaliaによるソロプロジェクト。
音のセンスもさることながら、このシンプルながら独特の美しさを持つミュージックビデオが素晴らしい。

OAFF x Lanslands "Grip"


Landslandsなる人物と共演した"Grip"のミュージックビデオもまた強烈で、こちらはフランス人映像作家Thomas Rebourが手掛けている。



Three Oscillators "Hypnagogia"


ムンバイのDJ/プロデューサーBrij Dalviによるソロプロジェクト。
当方ロック上がりにつき、この手の音楽には全く詳しくないのだが、ちょっとドラムンベースっぽくもあるこういうジャンルは何ていうの?IDM?
彼が所属するQuilla Recordsはこの手の電子音楽の要注目レーベルだ。
大都市の喧騒の中からこの静謐かつ知的なサウンドが生まれてくるところに、ムンバイの奥深さを感じる。


Oceantied "Reality"



ベンガルールのKetan Behiratによるソロ・プロジェクト。
彼もまた、ただアゲて踊らせるだけじゃねえぞ、というセンスを感じる音使い。


Cash "Longing"


詳細は不明だが、ボストンとニューヨークとムンバイを拠点にしているらしいCashというアーティスト。
いわゆる典型的なアンビエントだが、とにかく心地よく浸れるサウンドだ。
"Hatsuyuki""Sentaku"といった日本語タイトルの曲もあって、それがまた美しい。


Neeraj Make "Last Taxi"


チェンナイとロンドンを拠点に活動するNeeraj Makeが2021年にリリースした"Art House"の最後を飾る曲、Last Taxiも電子音楽としての美しさにあふれた一曲だ。


この手のエレクトロニカ/アンビエント系の音楽は、インドでも決してメジャーなジャンルではないが、そのわりにかなり多くのアーティストやレーベルが存在している。
若干ステレオタイプ的な話になるが、深淵な音の響きを追求する古典音楽や、瞑想の伝統を持つインドで、こうした「踊らせるだけではない」音にこだわった電子音楽が好んで作られるのは必然とも言えるのかもしれない。
(そう考えると、今回紹介した中ではレトロウェイヴ系のDreamhourはかなり異質だが)




この手のアーティストはインドにほんとうにたくさんいるので、今後もいろんな角度から紹介してみたい。





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